なめこ、生えました。〜特技はいたずら〜



「狭いけどゆっくりしてってね。」


秋の連休を使って神奈川から大阪へわざわざ遊びに来てくれた仁王とブン太と赤也を自分の家に招いた、久々だし色々話す事もあるだろうからと観光は明日にして初日は家でゆっくりしようということになった。
大荷物の三人はお疲れだろうからとリビングへ案内し、俺はキッチンへ。両親がいないのはのびのびできるけど、お茶の用意とかを俺がやらなきゃいけないのが大変だよ。


「言われなくても、ちょー寛いでるっす。」


それは良かった、とカウンターからリビングを見れば、三人掛けのソファを寝そべり占領している赤也が見えた。先輩二人が座る場所を取られて呆れているぞ、多分あとで真田へ報告されてしまうぞ。


「ブンちゃん、そこブンちゃんの座る場所ぜよ。」
「おう。遠慮なく座っとくぜぃ。」


場所がないならしょうがない、と赤也の上を指差す仁王が1人がけソファに座りながら赤也の足をがっちり掴んで逃げられないようにした所で、ブン太が赤也の背中に座る。手加減なしのブン太の重みは俺も勘弁だな。

キッチンで赤也の悲鳴を聞きながら氷を入れたコップにお茶を注いで、お菓子を忘れていたので皿とお菓子を取りにちょっとだけコップから離れた。

それを狙っていたのか分からないけど、うちの子たちは待ってましたと飛び付いた、もとい飛び込んだなんていうのは俺の見ていない所の事件。


「ほい、お茶とお菓子ー。」
「お、わりぃな。」
「慎先輩!俺、死ぬかと思ったっす!」


こってり先輩二人に苛められた赤也がぶーぶー文句を言いながら俺に泣きついてくる。いや、赤也が悪いしなーと思いながらも泣きつかれるのは慣れているので適当に返事してお茶を渡す。2人にもお茶を渡しお菓子をテーブルへ置いて、俺もやっと座る。

久々に会った三人はまた少しだけ大人びたようなそうでもないような幼稚度が増したようなやっぱ何一つ変わっていない気がする。うん。
俺がそう思うのとは逆に、三人は会った時から口をそろえて「慎は大人びた」と言う。なんとなく心辺りはあった。


「いただきまーす。」
「どうぞ。」


お菓子を真っ先に食べるブン太に、コップの中を凝視する仁王と、お茶を飲もうとした赤也…のコップの中にちゃんと入っていたお茶が口をつける前から一瞬にしてギュン!と底つきた。
音がしたよ、何て言うか本当にギュン!って。コップ八分目まで入っていたお茶がまたたきしている間に無くなった、なんてどんなマジックなのか教えてほしい。


「…あれ?」


手にしているコップの重みが無くなったのに頬を引きつらせながら、赤也が中を覗けば…


『こしまえっ!!』
「なんか入ってるぅぅぅ!!??」


氷をよじ登り真っ赤な髪を揺らしながら元気いっぱいに顔を覗かせたのは、うちの子の1匹…金ちゃんなめこ。
手を上げ挨拶する金ちゃんなめことは初めましてな赤也がコップをテーブルに置いて俺を見る。ごめんね、うちの子食べ物とかには目が無くて…って、それ以前になめこの事を言うの忘れてた。今の今まで人見知りで隠れていたからさー。
俺が大人びた理由、それは紛れもなく小さな子供のようななめことの生活のせいだろう。


「ごめーん。今、ウチにはこの金ちゃんなめこみたいな子がたくさんいてさー。」
「な、なめこ…コレ、なめこ!?」
「落ちつきんしゃい。それと、お菓子の山の中にもはいっとるぜよ…ブンちゃんが。」
「え、」


ポテチの山に指を差し入れ何かをずるっと摘まみ上げた仁王が、笑いながらブン太なめこの襟首を捕まえていた。わたわたと慌てるブン太なめこをテーブルの上に置けば、更にブン太のコップから岳人なめこ、仁王のコップからは甲斐なめこ、クッキーの裏から仁王なめこと掌サイズの可愛いうちの子がぞろぞろ。


「異物混入ごめーん。」
「これ…なんすか?」
「なめこ。」


ある日、庭にひょっこりと生えていた光なめこを皮切りに、俺の家の庭に度々生えてくるなめこ達。ソレは何処か知り合いに似ているので可愛がっているのだ。


「お前…まだ食べられてなかったのかよぃ。」
『だろぃ!』
「そっくりじゃのう。」
『ぴよ。』


ブン太はブン太なめこを摘まみ上げてはあまり気にいっていないのか睨みあげた、ただ仁王は楽しそうにテーブルに座る仁王なめこの頭を撫でた。
そこで、あれ?と他のなめこに昇られている赤也が首を傾げた。おかげで岳人なめこが落ちたぞ、あとで高額請求だ。


「丸井先輩に、仁王先輩…俺に似ているのっていないんすか?」
「あー…赤也はいないなぁ。」


そう言えばいないなぁ、なんて呑気に返事すればショックなのか「そーすか…」とガックリ肩を落とされた。いやー俺に言われても困るよ。俺の家の庭にでも言ってよ。
ぴょこぴょこ動き回るうちの子を眺めながら唇を尖らせた赤也が近くにいた金ちゃんなめこを撫でながら「副部長なめことかいなくてよかった…」とぼそり呟いた。いや、真田なめこ可愛いだろ、生えてほしいぞ。

うちのなめこ達がいつの間にか大集合したリビングで、笑いながら赤也が先輩二人に問いかける。


「可愛いっすね、なめこ。先輩達もそう思うっすよね?」
「…そうか?自分そっくりななめこは……赤也?」
「なんすか?」

「お前、いま俺じゃなくてなめこを見て話さなかったか?」
「……あ、そっちか!!」


本日二度目の赤也の悲鳴が、そして非常にレアな仁王の笑い声が家中に響き渡った。明日ご近所さんにごめんなさいとお菓子を配りに行こう、そうしよう。




なめこ、生えました。
  〜特技はいたずら〜



翌日。
まだ三人が眠っている部屋の扉を開けてやれば、真っ先に布団目掛けて飛び込んでいくなめこが三匹。


「ぐはぁ!?」
『だろだろぃ!』
「……ブンちゃん、重いぜよ。」


なかなかの勢いで仁王のいたらしい布団に着地したブン太なめこが重かったのか悲鳴を上げた仁王に合掌。ごめんね、どうしても驚かせたいっていうもんだからさ。
そしてブン太がいたらしい布団の上には仁王なめこが髪の毛を三つ編みにしてあげていた、うわー優しいそして器用!さすがペテンなめこなだけはあるね。

んで、赤也の布団に着地したなめこはそれはそれは大きな声で叫びました。


『たるんどるぅぅぅぅ!!!!』
「っふおあぁぁ!!??スンマセン真田副部長…って、なんで此処に!?」
「赤也、ソレはなめこぜよ。」
「今日の朝、庭で生えていたのでうちの子にしました。」
「丸井先輩!!副部長が…!!」
『だろぃ?』
「だからそれはなめこだって言ってんだろぃ!!」


俺の家は今日も賑やかです。


『たるんどるぅぅ!!』
「怖い怖い怖い!!慎先輩、この副部長何とかしてくださいよ!!」
「とりあえずお米あげときゃいいんじゃない?」


------


いつもなめこシリーズはMemoでたまに書いているのですが、
その全てが会話文、そして光と男主、なめこというメンバーで行っています。
初めて会話文以外で書きましたが…すっごく難しい!!あとギャグ系にすると会話が増える!!

蒼夜さま、こんな感じで大丈夫でしょうか?(笑)
本当は帰る時も赤也がなめこ二匹と帰るネタとか入れたかったんですが、それよりも真田なめこを優先してしまいました…スイマセン(´`;)

もしもこうしてほしいなど希望がありましたら言ってください!
リクエストありがとうございました!

どうでもいい話
真田の好物、肉となめこの味噌汁。


2013,10,07


(  Back  )


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -