狩りしましょ 6-1-



「新しいハンターさんなんです、仲良くして上げてくださいね。」


村長が店番をしていた俺に紹介したのは、生意気そうな顔した黒髪の男の子だった。名前を光、というソイツは口をへの字にし眉間に皺を寄せながら俺に小さく頭を下げた。
ソレだけで伝わったことは『あぁコイツ、蔵の噂を聞いて来たんだけど噂の主が怪我で休んでいるから肩すかしくらって不機嫌なんだ』ということ。そう思うと…随分と子供っぽい子なんだなというのが当時の第一印象。


「…どーも。」


渋々出しただろうその声は、聞きとった事を褒めてほしいほど小さい声で。
こんな小さな村の小さな武器屋の息子なんかを紹介されてもな…って込められた挨拶に、俺も同じ思いを抱きながらも一応挨拶。


「俺は慎、うちの店は武器屋でもあるし鍛冶屋でもあるからよろしく。」
「はぁ…。」


今、思い返せば。
当時の光は俺の事をずっと睨んでいた。その時は変わらない表情に気付かなかったけど…色んな表情を知った今思う、威嚇されていたんだって。
威嚇、そして品定め。自分にとって役に立つ人間なのかどうかという事を見極められていたのだろう、そして最初はその品定めで『役に立たない』と思われたに違いない。
だってその後村長が「慎君に色々教えてもらってね」と光を俺に預けた時、嫌な顔をして舌打ちをしたくらいなんだから。
なんだコイツ、態度悪いなって俺も思った。そして光も同じことを思ったに違いない。


「あのさ、俺の方が年上だと思うから言うけど。そう言うの包み隠せよな。」
「……すんませんね。」


最初はお互いがお互いの事、『最低』と思っていた。

けれど、ユクモ村に来たばかりの光のよりどころは村長しかいなくて。そんな村長は俺に全てを託して行ったもんだから、光は渋々俺の後ろについて回るしかなかった。
紹介された時はユクモ村へ来たばかりで住む場所がなかったから、俺の家の客間を貸してやって食事も服も全部用意してやったものだ。それくらいしたら少し態度は良くなった…親父にだけど。

光は頑なに俺を認めなかった、一緒に狩りに行っても色んな事を教えても蔵と仲が良い事を知っても…きっかけがなかったら、今もずっと認められていなかっただろう。


それは酷く綺麗な月が輝き夜なのに明るかった日のことだった。


別に急ぎの用ではなかった、けれど舞い込んできた依頼に光と俺がさっさと済ませてしまおうと渓流へ向かった事が事の始まり。
薬にもなるケルビの角を取ってきてほしいという依頼は簡単だった、ソレを達成するのに何の苦労もなかった。余裕だといつもよりあっさりとした鎧に身を包んで景色を楽しんだりなんかしちゃって。


「これで…5本か。」


依頼通り、5本のケルビの角を手にした俺達は会った時よりかはギスギスした空気はなくしていた、まぁお互い何処か嫌っているという部分を払拭してはいなかったけど。
皮の袋に角を入れた光が「肩慣らしにもなんないっすわ」と欠伸をしながら歩きだした、その背に『可愛くねー』と思いつつ、俺も歩きだした…

そんな俺達に差し掛かった、大きな影は月の光りを受け出来上がったもの。


「…っえ、」
「なんや…?」


見上げれば、そこには星と満月が見える…はずなのに。見えた物は銀色の美しい竜の体。そしてギラリ煌めく二つの瞳。
ぞっとした、大きな羽をはばたかせ俺達へ降り注ぐ風圧のせいかもしれなかったけど何よりもその美しさと自分達の薄い鎧に。


「嘘だろ…。」


出会ったのは本の中でしかその姿を見たことが無かった巨大な竜の姿。
当時の俺達はそこで初めて自然が生み出した宝石と出会い、その姿と獲物を捕えた瞳の強さに体が震えた。
月が輝く夜、降り立ったのは空の王者リオレウスの希少種。


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