ピンととがったソレ



からんからん、鈴を鳴らすこと9時間程度。
休みながら歩き進め俺は念願の家へ帰ってきた。結局、道路の上で一夜を過ごしたわけだが、まぁ車を運転するひともいない今では全然危なくない。むしろ安全。そうだ、今度車を運転してみようかな。信号も関係ないドライブとかどう?


「いいかも。」


くすくす1人で笑いながら、鍵もかけていなかった我が家の扉を開いて変わりない我が家へ大きな声を出す。


「ただいまー!」


何時だって「ただいま」と言えば、母親が「おかえり」と笑ってくれた。泥んこにまみれた日も転んで泣いて帰って来た日もテストで悪い点をとった日も。今日もそうならいいのに…なんてね。もう慣れたよ。

穴があきそうなスニーカーをやっと捨てる決心が出来た俺は「ありがとう」と言ってからゴミ箱へ入れた。誰もゴミ収集へ来ないけれど。
真っ赤なスニーカーも捨てて、ついでだ土まみれの服も捨てよう。小さな穴が開いた大きな鞄も。
もう二度と冒険には出ないんだ。もう終わった、この世界の隅々までは冒険していなかったけど、きっともう終わった。

最後の人類となった俺は久々に自分の部屋へ向かう。少しホコリをかぶった廊下を階段をぬけ、幼少期から俺と時間を共にした部屋を。

絶望も悲しみも苦しさも行き場のない叫び声も、後悔した事はないのだ。そう、なかなか寿命が来ないことくらいだろうか、あとはもう楽しむだけさ。


「楽しもうぜ、何もない世界を。」


吐きだした言葉に心から涙が生まれそうだったけれど、泣いたって人類が増えるわけじゃないしと笑って部屋の扉を開いた。しばらく開かなかったせいできぃっと音を鳴らす扉に謝りながら、冒険へ出た日から変わっていない中は…


「お。おかえり。」


…中は…







え、誰?

俺のベッドの上でごろ寝しながら集めた漫画を広げ寛いでいる1人の人…ん?人?
俺は何だよ、俺はこの地球最後の人類です。

じゃああの人、何?


「いやー自分、どこ行っとったん?ほんま待ちくたびれたで?」


淡い茶色の髪をガシガシかき混ぜながら漫画を閉じ起き上った不法侵入しているソイツは笑いながら「これおもろいなぁ」と漫画を褒めた。いや、うん知ってる。俺が集めた漫画だし。

というか、どう言うこと?


「…え、アンタ…人?」
「んー?」


もしかして灯台もと暮らし?他の街とか国を探しに行っていたけど、本当は生まれ故郷に生きている人がいて、俺は地球最後の人じゃなかったってこと?

いきなりの急展開に着いていけなくなりそうな俺の質問に、不法侵入しているソイツが声を出して笑ってベッドから立ちあがった。うわ、背高い。俺より背が高いしよくよく見ればイケメンだ。
シュッと通った鼻筋、綺麗に開かれた瞳に薄い唇、そしてとがっている耳……とがって、あれ、それどっかでみた……………あ、ゲームで見た。エルフの耳…え?


「ちゃうちゃう、俺は人やないで。いわば!妖精さんやで!」
「……か、関西弁の妖精がいてたまるか!!」


まったくもって夢がない、却下。もしくはチェンジで。とりあえず突っ込ませていただこう。

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2013,09,19


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