話しは纏まった、準備ができ次第練習だ。と言う王様の声に身なりを整えて慎を連れコートに出てベンチでちょっと待ってろよと言えば、元気いっぱいに頷いた。
ストレッチやランニングを一緒にやるわけにもいかねーし。慎が退屈しないように一応色鉛筆に自由帳、ジュースにお握りデザートにウサギ型のリンゴもあるし、なんとか今日を乗り越えようと固く決意した。

が、どうにも俺の心配は必要なかったかもしれない。

慎にはデカすぎる俺の帽子をかぶりながらベンチで岳人と何やら遊んでいる光景に、ホッと胸を撫でおろす。


「お、なんだそれ?」
「…りょーちゃん…。」
「おー。字、書けんのか?すげーな。」


岳人やジローとは打ち解けたようで。2人がそう言う決まりを作ったわけでも俺が頼んだわけでもないのに、交代で相手をしてくれているようで。
そんな光景を少し離れた所から休憩ついでに日吉や跡部も見てくれているようだし。長太郎は遊びたいんだろうけれど、俺と休憩が一緒だからまず長太郎の方へ見向きもしない、なんかすまん。

コンビネーション練習もそこそこに、俺と長太郎が休憩に慎の元へ行けばブカブカの帽子を落としても気にせずダッシュで俺に抱きついてくる、汗だくだから勘弁してほしい。


「わりーな岳人。」
「べつに楽しいから気にすんなよ。それに、」
「ん?」
「慎の相手してたら、跡部何も言わねーし。」


にひ、と悪い意味を含む笑顔を返される。サボりかよ。と笑え何処からともなく「良い度胸じゃねぇの?」と声がかけられそそくさと退散していく岳人に、慎は小さい手を振った。


「慎、お握りは食ったか?」


太陽も真上へ辿り着いた事だ、そろそろ昼飯を兼ねた休憩だろう。先に食べてしまっているのかもと尋ねれば、首を横へ振る。なら丁度良い、俺達も飯にするかと長太郎に言えばタイミングを計ったのではないかと思う跡部の号令がコートに響いた。

一度部室へ戻って弁当を持ち、木陰で弁当を広げる俺のあぐらをかく足の上に慎はちゃっかり陣取って。汗臭いだろう俺の匂いも気にせずに慎用に小さく握られているお握りに噛みついた。
はむはむと頬をいっぱいにしながら食べる慎を長太郎は見ていて。まだ一回も話していないしな。


「宍戸さん、慎君って何歳なんですか?」
「6歳。」
「へー…。」


慎が気になってしょうがないんだろう。まぁ兄としては気にしてもらえているという事実が嬉しい限りだけれども。気にしているっつーことは嫌いではない、むしろ好意的だという意味合いがある。
だからこそ、慎には長太郎とちゃんと話して欲しいのだが…今なら身長差もさほどないから話せんじゃねーか?

さて、どう会話のきっかけを作ってやろうかなと考えていると、部室から出てきたジローと岳人が弁当片手に木陰へ入ってきた。


「一緒に食べたいC〜!!Eでしょ〜?」
「おう。」
「慎、俺の名前もう覚えたか?」


膝をついて慎の頬をつつく岳人の指から逃げるためか、ぷるぷると顔を横に振って首を傾げて。期待の視線を向ける岳人に急かされながら、んーと悩みながら自信なさげに小さな声が出た。


「が、がく…と?」
「おー!すっげ、もう覚えくれた!!」
「じゃあじゃあ俺は〜?」
「……じ、ろー?」


やった〜!と弁当そっちのけで喜ぶ子守役2人に笑いながら、これは良いきっかけだと俺は慎の顔を長太郎の方へ向けた。
ん?と見上げてくる慎の頭を撫でながら長太郎を呼び近くへ来るように言う。ずりずりと近寄ってきた長太郎に、最初会った時よりは人見知りしていないが少しだけ俺のジャージの裾を握る。


「慎、コイツは長太郎だ。悪い奴じゃねーからな。」
「え、そう言う目で見られていたんですか…。」
「さぁな。背はでかいが、いい奴だ。仲良くできるか?」


顔を覗きこめば、ショックを受けているらしい長太郎をジッと見て。幾らか見た後、またコテリと首を傾げた、まぁゆっくり仲良くなればいいか。ともう一度頭を撫でてやる。
そのあとは岳人やジローが自分達の弁当のおかずを食べさせたりと家にいる時よりもちやほやされ話す事はなかったが、慎はチラチラ長太郎を見ていた。きっと近いうちに仲良くなる、俺は確信を持って言えた。



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ここまで書いて
飽きていたのを見つけた。
何時書いたのかは謎。

2013,07,18 Salvage


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