お年頃事情





「光死んだらあかんで!?」
「は?風邪で殺されたらたまらんすわ。」


久々に風邪ひいた。
熱は出るし鼻水は止まらんし喉は痛いわで最悪やし学校にも行けんし、部屋に居ってもパソコン禁止と母親にコンセント抜かれ没収されるわで精神的にも来とった俺の元に飛び込んできたんは、アホの先輩やった。

ちゅーか、部屋入ってきて一言目がソレってどうなんすか。なに殺しにかかってきてますの?ちゅーかノックせぇや、おかんもおかんやわ、なんも言わんで通しおって…。
いや部屋は汚れとらんし変なものがあるわけやないし別にええんやけど…いや、変なものあるわ、風邪の菌が充満しとるっちゅー話しやで。別にあのヘタレキング謙也先輩の真似ちゃうで。


「あ、寝ててええからな。そんでなコレ、謙也と蔵とユウジがスペシャル配合した栄養ドリンク。なんかなツンとする匂いすんねやけど、飲む?」
「トイレにでも流したってください。」


ごそごそと鞄から出てきた深緑の液体を入れたペットボトルを俺に差し出さんで下さい、それ見たら気分悪なりますから。風邪よりそれで死ぬやろ、ぜったい。
「せっかくのスペシャル配合した栄養ドリンクやで?」と首を傾げるのは可愛えからはよ鞄に戻したってもらえます?ソレか窓から全力で投げたってください今すぐはよ。


「ちゅーか、先輩あきませんて。」
「なにがやねん。」
「俺が風邪ひいとるのになんでくるんすか。」
「心配やからに決まっとるやん。」


いや、だから。
えっへんと威張る先輩に呆れながらも、まぁ来てくれたんは嬉しいしな…と前向きに考えることにせなやってけへんわ。あれやなバカは風邪ひかんっちゅーことやな、そういうことにしといたろ…。

でもずっと寝るのにも読み飽きた漫画をまた読むのも音楽を聞くのも飽きとったし、来てくれて良かったかもしれへんな。
わざわざ来てくれるっちゅーことは、脈ありかもしれんし………


「…先輩、なにしてますの?」


さっきからごそごそと本棚の裏やら机の引き出し開けたり、アンタ泥棒かなんかかいな。
ん?とこちらを見てはパッと笑って今度はベッドの下を覗き込んで…あかん、これはあかん知恵を吹き込まれた時の行動や…あんのクソ部長ども…風邪が治ったらほんまにお返しせなあかんわ。

いまだごそごそと何かを探しているんやろう先輩の首根っこを掴んで、コッチ向かせる。


「だから、なにしてますの?」
「蔵達がな『光みたいなんはムッツリやからエロ本ごっそり出てくるやろうから探してこい』って言うから探しとんねん。」


やっぱりかいな。




-数日後-


「部長、ほんま数日間の休みすんませんでした。」
「お、もうええんかいな。」
「えぇ。」


熱も下がったし喉の痛みも何もない。完璧に治ったわけや。なんだかんだで先輩はあの日から毎日来てはわざわざプリントやら部活の事やら話してくれて、確実に距離は縮まった。あとはあのバカな先輩をどう自分のモノにするかっちゅーだけや。

でもその前に。やり残したことばっかやわ。


「で、部長。」
「おん?きつかったら言うんやで?病みあがりやし…」

「誰が、ムッツリなんすか?」


根が深いっちゅーやつなんすわ、こういうのやり返さんと気が済まないんすわ。
先輩から没収しとったスペシャル配合した栄養ドリンクやったか忘れたけど、これが何処までのもんなんか見せてもらおうやないか。





「あり?光、もうテニスしとるんか?」
「…先輩、一緒に帰りましょ。なんか奢りますわ。」
「ええの!?…でも、なんで?」
「毎日看病に来てくれはったでしょ?お礼です。」


だれがムッツリやねん、あんたらの方がムッツリやわ。俺はエロ本持っとらんし。


(だいたいエロいんはパソコンの中だけで足りるんすわ。)




お年頃事情




「そういえば蔵達しらん?」
「あぁ…なんやったか腹痛い言うて帰りましたわ。」


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スペシャル配合した栄養ドリンク(中身は想像にお任せします。)

2013.06.24


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