晴れたら





雨。あめあめ。あーめ。

パタパタと窓にぶつかっては重力に従って下へ流れていく雨を眺める事27分程度、四捨五入したら30分だ。
此処は侑士の家、たまに遊びに来たら雨が降ってきた。来る時までは晴れていたんだ、天気予報だって「今日は曇りますが雨は降らないでしょう」って言ってたのに。

時刻はだた今17時43分。よい子は家に帰る時間なのだ。なのに俺は未だ侑士の家。雨足は強くなるばかり、濡れて帰る覚悟はできているし最悪軽い風邪をひくのも承知なのだが、


「スイマセン、お家に帰りたいんですが。」
「嫌や。」


この伊達眼鏡。
家から出ることどころか侑士の部屋から出ることも認めてくれません。せっかく人が敬語を使って頼んでいるのに一言か。扉の前に仁王立ちしては窓から外を眺める俺を軽く監禁しています。


「なんでだよ、晩御飯が俺を待っているんだから帰らせろよ。」
「そんなん俺ん家で食ってけばええやん。」
「ダメ。今日の晩御飯は唐揚げとカレーだから。」
「高カロリーな晩御飯やなぁ…。」


俺の家の晩御飯馬鹿にしたな?立ちあがって侑士を軽く睨みながらジリジリとその距離を詰める。正直、家に帰りたいって言うかお腹すいたんだよ。お腹空きすぎてダメージ食らって死にそうなくらいなんだからな。
なんでそこまで俺の帰宅を阻止しようとしているわけ?雨が降る前は普通だったじゃん、雨降ってからなんかこう……そう、どうやって帰るんだ?とか心配してきて。そんなに心配なら傘貸せ、そんで帰るから。


「侑士、もう帰らないと本当に親心配するって。」
「せやけど、こんな酷い雨の中歩いて帰るんやろ?」


今日は自転車で来たわけじゃないし、雨だから迎えに来てと親に言ったら怒られるだろうから頼めないし、となると行きと同じで帰りも歩きだろう。それか走る。
うん、と頷けば「あかんあかん」と真剣な顔で首を振る無駄なイケメン(残念なイケメンとも言う)。


「家に電話して晴れてから帰ればええやんけ。」
「アホか。」
「風邪引いたらどないするん?そんなん俺が困るわ。」


本格的に侑士がうざくなってきた、が、思えばこの雨。天気予報なのでは降るはずではなかった雨だ。
きっと通り雨なんだ。それならもうすぐ止んでくれるはず…そう思えば過保護な侑士による多少の窮屈感はあるものの侑士の家で雨宿りもありなのかもしれない。晩御飯も食べさせてくれそうだし。
雨さえ止めば侑士も俺を笑顔で送り出してくれるだろうし、俺も家に帰れて丸く収まる。これだ。


「…分かったよ。電話する、そんで雨止むまで此処に居るよ。」
「分かってくれたんか。ほな、晩御飯食べよか。」


心配してくれるのは嬉しいけれど、ちょっと大袈裟すぎないか?
そう侑士に言えば、ただ黙って笑われた。ついでに頭を撫でられた。




晴れたら




『一部地域で降っている強い雨ですが、明日の朝まで止まない可能性があります…』

「…あれ?」
「泊ってけばええやん。」

「……侑士、もしかして知ってた?」
「おん。」
「死ね、今すぐ死ね!」


---------------------


拍手なので短めに、短めに…
って、意識した結果がこれだよ。
過保護な侑士が好きです。

2013,06,05


(prev Back next)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -