千石と半年目



「んー!昨日の雨が嘘みたい!今日もラッキー!」
「清純ってこういう時は頼りになるよな。」


昨日というかここ一週間くらい空は厚い雲に覆われていて、雨も良く降っていた。
天気予報も「もうしばらくこのお天気は続きます」って言っていたけど、そこは俺の横にいる男のラッキーが吹き飛ばした様で。リビングの窓を少し開ければ、久々に肌にまとわりつかない爽やかな風が流れ込む。

清純との久々に被った休みは思いっきり洗濯して部屋のじめっとした空気を入れ替えたいなって話をしていただけに、天気予報を見た時はガックリ肩を落とした。
けれど横で清純が雑誌の占い記事を見ながら言ったのだ『明日は晴れる気がするけどなー』、清純の星座…射手座は一位でラッキーアイテムは目覚まし時計。成程、と雑誌を読み終えて寝る時は書いてあった目覚まし時計を枕元と言わずむしろ抱いて眠った男だ。

そのお陰なんだけど、


「…なんでだろうな、やっぱ納得できない。」
「え?なんで?」
「だってあの雑誌、俺が一位の時は当たらないんだぞ。」


清純で当たるのに俺では当たらないとはこれいかに。コレもラッキー千石だからなせる技なのだろうか。

むーと考え込みながらも俺は洗濯物を集める。今日は思いっきり洗濯する。枕カバーにシーツにテーブルクロスまで洗濯してやる。ついでだエプロンも忘れず持って洗濯機の元へ。
大荷物を抱える俺は落とさないように必死だというのに、コイツは呑気に俺の後をついてくるだけ。


「…清純、ついてくるだけならいらないぞ。」
「えー。アレだよアレ、落としたときに拾ってあげる要員。」
「いらない。」


スパッと言い切って洗濯機に持っていた物を半分入れて、残り半分はもう一度回す時まで籠の中で待たせておく。棚から清純が好きだという洗剤を入れて後は機械任せ。
クルッと振り返ればいらないと言われたにも関わらず清純の姿が、ニコニコしながら入口を塞いでいた。一体何なのだと俺は清純の頬をつねって嫌がらせする。


「なーんーだーよ!」
「いひゃいいひゃいいひゃい!!…もー…女の子にモテなくなったらどうしてくれるんだよ…。」


引っ張った所をさすりながらクスンと泣き真似をし始める清純に、俺はもう言うことなし。1つ蹴って端へ無理矢理押し込んでリビングへ戻る。
「じ、冗談だって。」と慌てて追いかけてくる清純の足音も無視して、俺はソファに倒れ込む。二人用だけど真横にどーんと倒れて1人用にしてやった。そしてそのまま少し眠ろうかなと、開けている窓から流れ込む風に髪が揺れる心地よさに目を閉じる。
清純の足音が近くに来ているのだけれども、俺は気にせずそのまま。


「慎ー、怒った?」


少しばかりトーンを下げた声に仕方なく瞳を開いて見れば、俺の顔を覗き込むようにしゃがんでソファの端に顎を乗せる清純と目があう。
怒ったというのは何のことだろうか、意味もなくついて来たことか、それとも通せんぼをしたことか。それ以外だって言うのなら…まぁ幾らでも上げられるから言わないでおくけれど。
でも怒っているか、と聞かれても今の俺は寧ろ久しぶりに昼寝しようと若干機嫌が良いくらいで。でも清純の顔が、返ってこない返事によって徐々に暗くなっていく。
どうにも俺を怒らせることに非常に心当たりがある様で。俺はないから分からない、だから聞いてみた方がよさそうだ。


「…怒るって、なにに?」
「え、怒ってないの?」
「怒ってないけど…何か心当たりあるの?」


そこまで話してパッと顔を明るくさせ、たのもつかの間。ハッと表情をこわばらせて今度は悲しそうに今まで顎を乗せていた場所に額を当てて俺からは顔が見れないようにした。

ソレがどんな意味を持っての行動なのかいまいち見当がつかない俺は、仕方なく上半身を起こして清純の腕を引いた。隣においで、そう意味を込めて軽く、本当に軽く腕を引いただけなのに、清純はチラッと顔を上げてすぐ隣りへやってくる。
なんだ元気じゃないか、心配するだけ無駄だったのかもしれない。心配されて調子に乗ったようでそのままの勢いで俺を抱き寄せては肩に顔を埋める。


「なんだよ。」
「だって怒ってほしかったから。」


は?
その発言に寧ろ怒りそうなのを堪えて、清純を見れば「アンラッキーなのかな…」と呟いていたので、また頬をつねった。
さっきと同じように「いひゃいいひゃい」と何度か言わせてから話してやれば、また頬をさすって…


「さっきもコレ、やったじゃん?」
「うん。」
「その後、俺が何て言ったか覚えてる?」
「…さっき、」


リビングへ戻りたかったのに清純が道をふさいでいて。それが邪魔で嫌がらせに頬をつねった。今の様に何度か「いひゃい」と繰り返した後…

『もー…女の子にモテなくなったらどうしてくれるんだよ…。』

…そう言った。

あ。
ようやっとそこで気付いた。清純がソレを言った意味と、今こうしてソレを思い出させる意味。そして「怒った?」と聞き怒ってないと返せば「怒ってほしかった」なんて言ってくる意味が。


「…清純。」
「分かった?」
「俺は休みの日まで嫉妬なんかしたくないよ。」


ただでさえ女の子に弱いから心配なのに、これ以上なんていらないよ。
今度は優しく頬をつねった。その手を捕まえて清純は嬉しそうに笑って指先に口付けて、俺をもう一度抱き寄せた。
狭いソファの上で大人2人が何をしているのだろうか、そんな事を思いながらされるがままボンヤリ清純を甘やかした。それこそ洗濯機が洗濯終わったよと教えてくれるまで。




半年目の晴れ空




「やっぱ今日もラッキーだ。」
「はいはい…。」
「慎もラッキーじゃん。」
「どのへんが?」

「恋人といっぱいラブラブできたところ。」
「…そうかもね。」
「かもね!?」


next...財前
----------------


初、清純ー。
格好良いですよね清純。
清純は(多分)私が好きなキャラべスト10には
入ってます(笑)

2013,07,04

(prev Back next)


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -