君と二人で、ひとつになりたい




家具職人のお爺さんにやたらと懐いているベポとお店の前で別れてから、また街をぶらつくことにした私とローさん。せっかくだから昨日は通らなかった通りも歩いてみようと、賑やかな街の喧騒に身を任せれば。


瞳に映るのは穏やかで、でも活気のある街の風景だ。買い物袋を抱えたまま店先で立ち話をするおばさん、仲睦まじそうにベンチへ腰かけている老夫婦。ワゴンを引くピエロに風船を貰ってはしゃぐ子供たち。

――二人並んで歩く私たちも、景色の一部として溶け込んでいるんだろうか…なんて思うと少しくすぐったい。



「で、次はどうする?」

「え?」

「どっか行きてェとことか、見たいもんはないのか?」

「うーん、そうだなぁ……あ、」



目の前を横切っていく赤や黄色のカラフルな風船。ふわふわと揺れるそれらを追いかけた視線の先には、少し開けた広場があって。道化師に扮した大道芸人がおどけた仕草でパフォーマンスを繰り広げ、拍手喝采を浴びていた。



「ねえ、あれ!アレ見ていこうよ!」



ローさんからの返事を待つよりも先に、見物人で出来た人垣へと近付いていく私の右手を、刀を持っていない空いた左手がぎゅっと強く握る。DEATHと彫られた五本の指は物騒な文字とは裏腹に、人肌の温もりを携えて私の手のひらを包み込んだ。



「また勝手にいなくなられたら困るからな」

「……もう攫われたりしないもん」

「ハッ、どうだかな」



小馬鹿にしたように口端を吊り上げる、そんな意地悪な表情にさえ私は心を奪われてしまう。いつの間にか自分でも気が付かないうちに、ローさん無しじゃ生きていけなくなってしまいそうで……ううん、きっともう現在進行形でそうなっちゃってるんだろう。

ただ一つだけ確かに言えることは―…特別な場所じゃなくても、とびきりの出来事がなくても、一緒に過ごすのがローさんならそれだけで満たされる。


きっと大海賊時代のこの世界で生きるということは、わくわくするような冒険や楽しいことばかりじゃない。命にかかわるような危険な目に遭うことだって、もちろんあるだろう。

それでも私にとってローさんは、この世界での存在理由。ローさんの隣こそが、私の唯一の居場所だって自信を持って言えるから。



「……私、ローさんとだったらラフテルだろうが、インペルダウンだろうが…どこまでも着いてくからね」

「ナマエ…」

「だから絶対離さないでいて」

「…当たり前だ、誰が離してやるかよ」

「うん、…ふふ」



ニヤリと不敵に笑うその表情に私も笑みを深めると、お互いの温もりを確かめるように握った手にぐっと力を込めた。





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