君に囚われた心が、甘く疼きます




船に戻りたいと言った私にキスの雨を降らせたローさんは「帰るぞ」と一言だけ私に告げると、無言のまま足早に船への帰路を辿る。


もちろんその間ずっと、二人の手のひらは繋がれたままで。こうやって人混みを手を繋いで歩くのなんて初めてだったから、何だか照れ臭くて気恥ずかしくて…でもちょっぴり自慢したいような、誇らしい気持ちになった。


私が好きな人はこの人なんだよ、素敵でしょう?なんて…すれ違う人みんなに言って回りたいような、そんな気分なんだ。


でも道行く女の子が振り返ってローさんを見てたりすると、何だかモヤモヤしてきて不安になる。こんな風に一喜一憂するなんて、今までなかった。気持ちの揺れ幅がぐらぐらと不安定なのが、自分でも分かる。


――これが恋、ってやつなんだとしたら…なんて甘くて痛くて、恐ろしいヤツなんだろう。





*****





「ロー…さ…んっ」

「ナマエ、」



バタンと大きな音を立て、閉ざされた船長室の扉。そのまま縺れあうように船長室のベッドへ倒れ込む私に、覆い被さってきたローさんが焦れたように唇へ噛みついてくる。



「…ふっ…ん、んぅ…」



差し込まれた舌が縦横無尽に口内を犯した。ぬるぬると蠢くソレを受け止めるのに精一杯で、余裕なんてどこを探しても無い。

だからだろうか―…身体の輪郭をなぞるように這っていた大きな手のひらが、穿いていたショートパンツのボタンへかかるのに気付くのが遅れたのは。



「やっ、待っ…!」

「これ以上、待てねェ」



そう言うが早いか、抜き取られたショートパンツは放物線を描いて床の上へと放り投げられた。慌てて上半身を起こした私を窘めるように、小さなリップ音を立てながら首筋に落としていく唇は熱い。


唇が離れた瞬間、肌を掠める吐息さえも同様に熱くて。触れ合う場所から溶け出してしまいそうな、そんな錯覚を起こす。羽織っていたはずのパーカーはいつの間にかだらしなく肩からずり落ち、カットソーの裾から侵入した骨張った手が素肌に触れた。



「っひゃ…!」

「くすぐってェか?」



脇腹を撫で上げる手のひらに過剰に反応してしまった。咄嗟に零れた自分の声に驚いて、慌てて口を噤むけれど……目敏く私の反応に気付いたローさんが口端を持ち上げて意地悪な笑みを浮かべる。



「んっ、ぁ…ッ」

「ナマエ、知ってるか?くすぐってェところは、性感帯なんだぜ」

「やぁ…っ」



鎖骨を舐っていたはずの舌が、ローさんが言うところの"性感帯"を私に教え込むようにゆっくりと舐め上げていった。自分の意志とは無関係にピクンと震えてしまう身体が何だかはしたなく思えて、どうしようもなく恥ずかしい。



「や、だ…やめ…恥ずか、し…んッ」

「こういう時の"やだ"も"やめて"も、逆効果だって知ってて言ってんのか?」

「やっ…知ら、なっ…こんなの、はじ、めて…だも…っ!」



素肌に這わせる舌はそのままに、下から見上げてくるローさんの瞳がすっと細められる。そこに灯る色は今まで見てきた表情のどれと比較しても、比べものにならないほどにとても深く、情熱的で。



「……だったら教えてやるよ、これ以上男を煽ったらどうなるのか」



獲物を捕食する時の肉食獣はきっとこんな目つきだったんじゃないのかなぁ、って場違いなことが頭の片隅に浮かんだ。きっと私は今から、ローさんに食べられてしまうのだ。





- 18 -
目次 | *前 | 次#

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -