こうして知らず捻じれていくのです




大人二人が寝転んでもまだ広い、船長室の大きなベッド。いつもは壁とローさんに挟まれて眠りに就くというのに。



「……やっぱり戻って来てない、か…」



少し腫れぼったい瞼を擦りながら、ひんやりとした隣のスペースを見遣れば。乱れることなく皺ひとつない状態のシーツが目に入って、少し寂しくなる。


昨夜は「抱き枕係」に任命されてから、初めてその役目から解放された夜だった。


本来ならばそんなセクハラめいた目に遭わずに済んで、大いに喜ぶべきところなんだろうけど。そうは思えない自分自身は、いよいよローさんに毒されてきているなぁ…なんて。


苦笑いしながら服を着替えて、赤い目を誤魔化すようにいつもより念入りに顔を洗ってから部屋を出た。


そうだ。コックさんの手伝いが終わったら、医務室までローさんを起こしに行かなきゃ!結局昨日もゆっくりローさんと話が出来なかったのも気になるし…。





*****





「あれ、ローさん?」

「…あァ、ナマエか」

「おはよう、ナマエ」

「ペンギンもおはよう」



朝食の準備を手伝おうと、他のクルーたちよりも少し早めに向かった食堂には――ペンギンと一緒に海図を広げているローさんの姿。


最近濃くなっていた目の下の隈が、一層酷くなっている。たぶん昨日あのままカルテ整理に没頭して、ろくに睡眠もとらないまま朝を迎えたに違いない。まったく…もう少し自分の身体を労わって欲しいもんだ。



「もう、昨夜あのまま医務室で寝たんでしょ?」

「あー…」

「最近寝不足みたいだし、身体壊すよ?」

「………誰のせいだよ、誰の」



ローさんの身体がただ純粋に心配で。不健康そうな顔を覗き込むけど、そっぽを向いたローさんは頬杖をついたままボソリと何かを呟くだけ。



「?なんか言った?」

「別に」

「あ!それよりね、今日島に上陸したら二人で出掛けない?」

「…何だ、ナマエの方から誘ってくるなんて珍しいな」

「うん、ちょっとゆっくり話したいことがあって」

「話?…まァいい、俺もお前と出掛ける所があったしな」

「出掛けたい、ところ…」



ローさんからどこかに誘われるなんて一体何事だろう?と小首を傾げるが、またすぐにペンギンと海図を指差しながら会話を始めてしまう。……ま、いっか。行けば分かる、よね?


何となくローさんの言葉に引っ掛かりを感じながらも、私を呼ぶコックさんの声に慌てて厨房へと駆けこんだ。


そんな私の後ろ姿を、ローさんが溜め息まじりに眺めていただなんて思いもせずに―…





- 5 -
目次 | *前 | 次#

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -