そんな一言で済ませないで下さい




夕焼けを背負って帰って来た船の甲板では、海風にはためくシーツを取り込もうとするハートの海賊団のおかん、ペンギンの姿。


今頃キレイなオネーサンといかがわしいコトをしているだろうエロ船長より、甲板掃除から洗濯まで…一日働き通しのペンギンの方が、よっぽど尊敬に値する。


そんな事をふと考えてしまった私は、買い物の途中でローさんが裏通りへ消えたのを未だに根に持っているらしい。



「「 ただいま〜ペンギン 」」


「ああ、おかえり。早かったな」



私とベポの姿を見つけたペンギンが、几帳面に畳んだシーツを小脇に抱えたままゆっくりと近付いて来る。



「…そう?結構お店巡りして来たんだよ、…ほら!こんなにいっぱい買っちゃったし」



ローさんと別れた後にヤケクソ半分で買い物しまくった、戦利品のショップ袋を掲げて見せると。



「…ん?そう言えば、船長は一緒じゃなかったのか?」



何気ないペンギンの発言に、分かりやすい程ぎこちない空気を漂わせるベポ。

私の方はと言うと―…今の状態を絵で表せば、きっとズーンという効果音が似合いそうな程に、重たい空気を背中にずっしり乗せているはずだ。



「……おい…どうした、お前達」


「…お母さん、ちょっと聞いてくれる?」


「誰がお母さんだ、誰が…」



すごく嫌そうに眉をしかめるペンギン…いや、実際は帽子のせいで表情は見えないんだけど、まぁ雰囲気ね。


そんなペンギンをまぁまぁと窘めながら、甲板に腰を下ろさせる。

シーツを抱えるペンギンと共に完全に井戸端会議の態勢に入ってしまったので、空気を読んだらしいベポも隣へ座った。





***






「――というワケなのよ、どう思う!?ペンギン!」


「…まぁ、よっぽど1発ヤりたかったんだろうな。船長も男だ、大目に見てやれ」


「おいこら。どこの世界に買い物の途中で女とヤって来まーすって、出て行った奴を笑って許す人間がいるんだよ。失礼でしょーが!」


「…こ、言葉遣いが…ナマエ…」


「ベポは黙ってて」


「すいません…」


「ったく…野生動物じゃないんだから、TPO弁えて盛れっつーの!」


「たしかに、ナマエの言う事は尤もだが…」



ふむ…と腕を組んで、何か考えを巡らせる素振りを見せたペンギン。




「――だがな、それがうちの船長なんだ」




船長が残念なら、その船のクルーの頭も残念になっちゃうんだろうか。

ペンギンの口から飛び出した言葉と、さも当然と言わんばかりの真顔に、何故だかイライラが再燃してきた。


……何なんだ、この性に開放的過ぎる海賊団は。




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