全て話す前にこれだけ言っておく




ナマエが次に目を覚ますと、目の前には茶色い木目。

うん、どうやら床に転がされたままのようだ。酷いことしやがる。



「女、俺の質問に答えろ」



この惨状を作り出した男――信じたくないけどトラファルガー・ロー…漫画のキャラだ、が偉そうにソファにふんぞり返って聞いてくる。


いや、もうそれは尋ねるという行為を通り越して命令形なんだけども。



「もう一度聞く、お前は何者だ。何処から、何の目的で来たんだ」



ていうか、矢継ぎ早に質問されてもこっちが逆に聞きたいっつーの!

大体「いや〜実は異世界からやって来たみたいで。こっちの世界は漫画の中のお話なんですよ〜」って言って信じるバカがいる!?いないよね?頭がおかしいと思われて終わりだよ。

そう思い目を逸らしてだんまりを決め込もうとすれば―…



「さっさと答えろ、細切れにされてェか」


「っ…そ、そんな目的とか!分かんないよ…私、ただのフリーターだもん!気付いたらこっちの世界に来てただけで…!」



ぎらついた刀身を頬に当てられ、どうしようもなくて思わず叫ぶ。



「ほぅ…こっちの世界とはどういうことだ」


「う…」



しまった、余計なこと言ったかも。


返答に困って視線を泳がすと、トラファルガー・ローの後ろに腕を組んでこちらを窺う男二人と白熊の姿。


あ、あれ…名前知らないけど帽子のクルー1号と2号だ。



「…って、ああぁあ!それ私のカバンっっ!!」



PENGUINと書かれた帽子の男の腕の中には、私のショルダーバッグ。



「中身を確認したが、見たことないような物ばかりだった」



私のピンクの携帯を指先で弄りながら、トラファルガー・ローが事も無げに言う。



「ちょ!乙女のカバンを勝手に漁んないでっ!携帯見んなっっ!」


「俺に指図するな。海王類の餌になりてェのか?…お前の命は俺の手の中にあること、忘れんじゃねェ」


「………スンマセン」



自分、弱っ!
でも情けないけど、この人に逆らっちゃホントに命がない気がする。

それに正直、今頼れるのは目の前にいるこの悪人顔の男だけだ。仕方ない…



「…私が知ってることなら全部話す、話しますからっ…




ちょ…、

トイレ行かせて…!も、漏れ…る…!」




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