夕焼け、このモヤモヤを焼き尽くせ




1発ヤってから帰る――そんな言葉を残して、ローさんは私とベポを置いて背を向け歩き出した。


身動きも出来ずただ呆然と、怪しげな裏通りへ姿を消すローさんを見送る…私とベポ。


ちょ、ちょっと待ってよ…ヤるって何を!いや、ナニを!?
やっぱり、そういうこと…だよね?

ていうか、さっきまで普通に一緒にお店見て回ってたじゃんか。意味わかんない。


なんか…すっごいムカつく。買い物付き合ってくれるんじゃなかったの?まだ下着だって選んでないし、お腹だって空いたのに…!

……もう知らない…あんな変態船長なんて、勝手にどこへでも行っちゃえばいいんだ!


――…せっかく、


一緒に街を歩けて、楽しかったのに…
洋服選んでくれて、嬉しかったのに…


それに――結局はヤれる女なら、誰でもいいって事だよね…


もちろん、私にその事をとやかく言う資格なんて無いのはよく分かってる。

私はたまたまこっちの世界へやって来て、たまたまハートの海賊団の船に落っこちただけの、場違いな人間だ。


船に乗せてもらえてるのだって、ただのローさんの気まぐれ。

ローさんの腕の中で目覚める朝が、今日で二度目を迎えたとしても…そこに深い意味なんて存在しない。


女っ気のない船上での暇潰し、戯れ。そんなもんだろう―…


買ってもらったワンピースの裾を、ぎゅっと強く握って俯く。そんな私の背中を、ベポの温かい手がポンと撫でた。



「ナマエ、買い物まだ残ってるよね?おれトコトン付き合うよ!」


「ベポ…」


「ほらっ!キャプテンに預かってるお金もまだこんなにあるし、沢山買って帰ろう?」


「うん…」


「おれ、もうお腹ペコペコだよ〜!何か美味しいもの一緒に食べよーよ」


「……うんっ!」





***




買い物を終えての、船までの帰り道。

沢山の荷物を軽々と運んでくれるベポと一緒に、夕日を背負ってゆっくり歩いた。


振り返って眺めた夕日は、とても大きく真っ赤に燃えていて。街の彼方に沈めば、空はキラキラのネオンで輝き出すんだろうな。


ローさんは今頃、どこで誰と一緒にいるんだろう。




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