無反応とか、失礼だから!




「おい、まだか?開けるぞ」


「えっ、ちょっ待って待って!開けちゃダメ!」


「待てねェ、ちゃんと見せろ。間違っても脱いで出て来んじゃねーぞ」



鍵のかかった試着室の扉。ドアノブが外れるんじゃないの?という勢いでガチャガチャと上下に動かされるソレは、もちろんローさんの仕業だ。


――何だか、ホラー映画みたいで怖いからやめて欲しい。


そして…実は店員さんが選んでくれた上下セットはもう試着し終わって、今はローさんが選んでくれたワンピースを着ている私。


胸元が丸くなだらかに開いたワンピースは、胸下で切り替えになったシルエットも女の子らしくて可愛い。

似合う似合わないは別として、ローさんが選んでくれたソレは乙女心をくすぐるデザインだった。


でも外に出るのは恥ずかしかったから、サイズだけ確認して脱ごうと思ってたのに――そんな私を見透かすように、脱いで出て来たらその場で剥くぞ、などと物騒な言葉が聞こえてくる。


……本気でやりかねないのが、この男の恐ろしい所だ。素直に言うことは聞いておこう。うん、それがいい。



――ガチャ―…



「……どう、かな?」


「………」


「…何か言って下さいよ」



試着室のすぐ横の壁に、腕を組んだまま凭れていたローさん。

その姿を見つけて、着ているワンピースの裾を広げながら問いかけたものの―…何故か無言のまま、鋭い視線に晒されている。


う…やっぱこんなデザイン、私には似合わなかったかな。


いや、でもローさんが着ろって言うから着ただけだし?別に似合わなくたって、全然構わないし!?

…ていうか何か言ってよ、反応ないのが一番恥ずかしいんだってば。


視線を合わせたまま気難しそうな表情を浮かべる、ローさんを窺うように首を傾げていると――



「いやぁ〜凄く似合ってますよ!さすが彼氏さんのチョイスですね!」


「…は?」


「あァ?」



空気を読まない店員さんが、揉み手しながら的外れな賛辞の言葉を送ってきた。


え、ちょっと、ローさんの眉間の皺が一本増えたんだけど…どうしてくれんの店員さん!




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