お母さんのカミナリが落ちました




さてと、セクハラ船長の部屋を出て物置部屋に戻って来たわけだけど―…

あと少しで、こちらの世界へ来てから初めての島へ上陸する。


せっかく街へ出るんだから、お洒落して見て回りたい…けれど残念ながら今の私には、つなぎとローさんに借りた洋服しかない。


仕方なく、こちらへやって来た際に着ていたコットンブラウスにベスト、ショートデニムにブーツ…という出で立ちで甲板へ出た。


せめてもという気持ちで、化粧ポーチに入っていたわずかばかりの道具でうっすら化粧も施してみるが…目力が普段より格段に弱いのが…切ない。



「ナマエ、やっと来たー!」


「お待たせ〜」


「あれ?なんかナマエ、メスっぽい。ねぇ、キャプテンもそう思うよね!?」


「そのショートパンツから伸びる白い太腿は、なかなかイイ」



小走りでベポとローさんの元へ向かうと、ぽふぽふと肉球付きの手で頭を撫でてくれるベポの横でニヤニヤするローさん。



「ベポありがと!でもメスじゃなくて、女の子っぽいって言おうね?けど、ベポは女心がよく分かってるよ〜エラいエラい!」


「俺の教育の賜物だろ」


「…何言ってんの、ローさん。よく一緒に過ごしてて、ベポにセクハラ癖が移らなかったもんだよ」


「分かんねェぞ、メスのくまにはセクハラするかも知れねェだろ」


「えっ…しないよ!?キャプテンひどいよー」


「まぁどっちでもいいけど、セクハラ癖があることは自覚してるんだねローさん」


「どっちでもよくないよー!ナマエもひどい!キャプテンと一緒にしないでよー」


「何だと?ベポ…もう一度言ってみろ」



――…ガシャンッ!



つまらない言い争いを繰り広げていると…いきなり背後で大きな音がして、思わず振り返った。



「おいお前達、街へ行くならさっさと行ってくれないか?今から甲板の大掃除するんだ。ほら船長も!一緒になって何やってんですか!」



そこに居たのは、デッキブラシとバケツを持って仁王立ちするペンギンだった。

いや、ていうかアナタ……休日にゴロ寝する父親を追い出す、オカンですか…!




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