外科医よりコック派なんですが…




「……ん…」



うっすら瞳を開けるとぼやけた視界に鮮やかな黄色と黒が飛び込んできた。



「……ハッ…やばっ!遅刻っっ!!」


「起きたか」


「ひぃっ!店長ごめんなさいぃ!!これには深いワケがぁ…って、アレ?」



……店長じゃない。ていうかこの人、誰?




「俺は店長じゃねェ、この船の船長だ」




黄色地に袖の切り替え部分が黒になったラグランタイプのパーカー。

ダルメシアンのような斑模様のファー帽子に、そこから覗く鋭い眼光と不健康そうな目の下の隈。


何かどっかで見たことある気がする…えーっと、どこだっけ?
でもこんなイケメン、知り合いにはいないしなぁ…


うーんうーんと唸りながら傾げた視線の先、目の前のイケメンが着てるパーカーに、デカデカとプリントされたスマイルのようなマークを見つけた。


……あ、れ…って、確か……


…あ、あ、、ああぁぁあぁあ!!

し、知ってる!この人ワンピースに出てくるルーキーじゃん!!
えっと、名前は何だっけ!?シャボンディ諸島で出てくるんだよね!仲間に打たれ弱い熊がいるんだよ!

ワンピースは我が心のバイブル!漫画は全巻持ってて何度も読み返してるもんね。それに全然自慢にならないが、ワンピ熱が高まりすぎて最近じゃ非公式で書かれてる小説を探してはこっそり携帯で楽しんでたりもする。いわゆる夢小説ってヤツだ。



「とら…トラットラガルル!」


「…トラファルガーだ。てめェ、斬られてェのか」


「そうそう、トラファルガー・ローだ!思い出した!ってか、お兄さんコスプレ通り越して生き写しだねぇ〜凄い凄い!」


「……あァ?何をワケの分からねェこと言ってやがる」


「ぷっ、口調もそれっぽい!あーでも私サンジ派だからさー、あんま萌えないや」


「……は?」


「あっでもご心配なく!私コスプレとかそういうオタク要素に偏見とか無いタイプだし!」


「…チッ、頭でも打ったか?めんどくせェな」



ローが目の前の面倒臭い女に頭を抱えていると、ドアをノックする音。



「…入れ」



部屋へ入ってきたのはハートの海賊団戦闘員の白熊、ベポ。



「あっ、喋る白くまもいるー」


「えっ…何で!?おれ、まだ…」


「……待て、女。お前、何故ベポが喋れることを知ってんだ」


「ハイ…?何言ってんの。当たり前でしょーがそんなの」



だって漫画で見たし!などと、のんきに話すナマエはローが能力を発動し、そのサークル内に自分が取り込まれた事に気付いていない。




――チャキ、……スパーンッ!






「……………え?」





生首状態のナマエの頭を掴み、鋭い目をしたローが問いかける。




「てめェ、何者だ」




刺青だらけの手に頭を持ち上げられたおかげで、ナマエは床に転がる自分のバラバラパーツを確認することが出来た。


と同時に、ゆっくりともう一度気を失う。そして、薄れゆく意識の中で思った。


どうせトリップするなら麦わらの一味のところがよかった、サンジにメロリンされたかった…と。




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