意志の強い瞳は、嫌いじゃない




食堂に入るとクルーはみんな既に席に着いていて、湯気の立つ焼きたてのピザとトマトスープを囲みながら賑やかに談笑していた。



「ナマエ、こっちこっちー!何してんの?早く来なよー」



手招くベポのテーブルには、何やら話し込むローさんとペンギンの姿。(残念ながらシャチは未だ甲板のようだ)

近付いてみると丁度話題の中心は、先ほどの新聞記事に載っていた麦わらの一味について。



「ああ、ナマエ。そう言えばお前の居た世界は、こちらの世界の出来事についてどこまで詳しく分かるんだ?」


「えっ、何で!?」


「そりゃお前、この船のクルーは全員船長にワンピースを手にして貰いたいと思ってるからな。得られる情報は多いに越したことない」


「…ぅ…何でも分かるわけじゃないよ?逆に知らないことの方が多いと思うし…」



テーブルに着いた私の姿を見るなりペンギンが問いかけてくる。

…いくら最初に事情を説明したとは言え、漫画で知った知識を必要以上にベラベラ喋っていいとは思えない。


しどろもどろになっていると、隣の席に座るローさんが口を開いた。



「麦わら屋が起こしたエニエス・ロビーの一件については知っていたのか」


「…あー……うん、まぁ…」



多分あの一件については、新聞では語られていない一部始終…嘘偽り無い真実を知ってると言っても過言ではないだろう。

だからこそ知っていて教えない、というのはローさんたちに隠しごとをしているようで(まぁ実際そうなんだけどさ…)何だか心苦しい。


けれど新聞で報道されている以上の情報を、今ここでローさんたちが知る必要は…あるんだろうか?

私がこっちの世界に来てしまったこと自体、向こうの世界に何らかの影響を与えてしまっているかもしれない。

その上、原作の中では知り得るはずのなかった情報をローさんたちに教えてしまうのは…凄く軽はずみなことなんじゃないかと思う。



「…ほォ、この俺に隠しごとか?」



黙り込んだ私の反応を窺うように、頬杖をついたローさんがニヤリと笑う。何も言えず俯いたまま、あーとかうーとか言葉にならない声を出せば。



「……と、言ってやりてェとこだが…まァいい」


「えっ…」


「船長、いいんですか?せっかくの情報ですよ?」


「フフ…実際何があったかなんて今更興味ねェ。麦わら屋がエニエス・ロビーを壊滅させたっていう事実だけが全てだろ」


「ローさん…」


「これで麦わら屋は数いるルーキーの中でもまた頭一つ抜き出たってわけだ」



そう言いながら真っすぐ前を見据えるローさんの横顔は、まさに精悍という言葉がぴったりで。

掴み取るべき何かを胸の内に持っている人というのは、こんなにも力強い眼差しをしているのか…と思わず見入ってしまう。


私にはどうしても手に入れたいものや、命を懸けてでもやりたい事なんて無かったな―…なんて、ちょっぴりローさんが眩しく思えたりした。




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