深い意味なんてないんだってば




朝食を終え、ペンギンたちと船の航路について打ち合わせを始めたローさん。

クルーのみんなはそれぞれ役割や自分の持ち場が決められているらしく、食事を終えた者から順に食堂を出て行った。


ローさんからは船内の雑用と俺の抱き枕になるのがお前の仕事だ、と朝食をとりながらシレッと宣告されたんだけど。

…いやいや、抱き枕は仕事じゃありませんって。


まぁとりあえず雑用の方だけでも…とキッチンを覗けば、大量の食器を洗うコックさんがこちらに気付いてニカッと笑いかけてくれた。



「えへへ…手伝ってもいいですか?」


「おう!そりゃ助かる。頼めるかい?」



昼食の下ごしらえを始めたコックさんの隣で一枚ずつ丁寧にお皿を拭いていく。うん、ンまい!なんて時々声を上げながらコックさんが語ってくれたのは、これまでのハートの海賊団の航海のお話。


もちろんそれらは漫画では語られることのなかったもので、聞き慣れない単語が出てくる度にコックさんを質問攻めにしながら、興味深く耳を傾けた。


それからどの位の時間が経ったのか、昼食の海鮮トマトスープの美味しそうな匂いがキッチンいっぱいに漂う頃――



「おい、ナマエ知らねェか…って、何だここに居たのか」


「あ、ローさん!」


「ああ、悪ィね船長。嬢ちゃん借りてるよ〜」


「いや、それは構わない。こんな奴で役立つんなら使ってやれ」


「ちょっ…何気に暴言!」


「フン、言ってろ」



何をしに来たのかと思えば、さり気なく私をバカにしてさっさと一人船長室へ戻ってしまったローさん。

その後ろ姿に首を傾げていたら、コックさんが訳知り顔でニヤニヤ笑いながらこちらを見ているのに気付いた。



「…な、なんですか」


「いやァ〜別に?ああいう船長もイイなァと思ってねェ〜」


「は?あんな意地悪しか言わないののどこが…ってか、え?もしかしてコックさんって…ローさんにホの字!?」


「ばァ〜か!嬢ちゃんの姿が見えないから探しに来るなんて可愛いとこもあるな、つー話だよ」


「はぁ?まっさかー!あは、ははっ」



ゴチンと落ちてきた拳に頭をさすりながら笑えば、呆れたようにこちらを見てくるコックさんの視線が突き刺さった。



「…ま、今はまだそれでもいいかねェ〜」



今はまだ、って何が。てか、いや…まだも何も…ねえ?

やだなーもう、女子中学生じゃないんだからそうやってすぐ誰と誰が好き同士〜とかってノリ、やめて欲しい。


……だって、なんかヘンに意識しちゃうじゃん?




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