デンジャラスモーニング




「……う、んー?…おも、い…」



ズシリと身体全体に圧し掛かる重みで、目が覚めた。

ズキズキと痛む頭は、二日酔いだろうか?そう言えば昨夜はベポと無事仲直りが出来て、その後も延々と続いた宴で久しぶりに沢山お酒を飲んだ気がする。

でもその割には吐き気だとか気分の悪さはないなぁ…なんて呑気に目を瞬かせてから、やっと気付いた。


――何をって?

圧し掛かる重みの正体、視界いっぱいに広がる黄色と黒のコントラストですよ。


もしやと慌てて顔を上げた先には、思いの外丁寧に整えられた顎鬚。

恐る恐る顔を引いてぼやけた視界に焦点を合わせれば、やっぱりと言うかなんと言うか…そこには目を瞑るローさんの整った顔があった。



「…っな!!!」



何でローさんがいるの!ていうか何で一緒に寝てるの!?という私の叫びが、声になることは叶わなかった。

何故ならローさんの大きな手で鼻の穴もろとも息を塞がれたからだ。ちょ、死ぬ…!



「黙れ、朝っぱらからうるせェ」


「ふんぐー!んん"ー!」



力の入らない手でペチペチと胸板を叩けば、舌打ち混じりにやっと手を放してくれた。…いやいや、舌打ちしたいのこっちだからね!



「お前、意外と抱き心地いいよな」


「…は?てか、え?ちょ…やっ!」



意外と筋肉のついている逞しい片腕で抱き込まれた身体は、見事に身動きが取れない。その体勢をいいことに、身体のラインを確かめるように這う手のひら。



「ちょちょ、ちょーっと待った!」


「待ったナシだ」


「いやいやいや、ローさ…んっ!」


「寝てる間に襲われなかっただけ感謝しろ」


「ちょ、襲おうとしてたんかい!」



渾身の力を込めて押し返す胸板と、容赦なく距離を縮めてくるニヤリと厭らしく歪んだ顔。必死の力比べは両手首をベッドに縫い付けられ、呆気なく終了。

そのままぺろりと首筋を舐められて、思わず奇声を発したのはやむを得ないと思う。



「ひぃぎゃぁあっ、うあッ…ちょ!」


「……お前な、ムードってもんを考えろ」


「いやいや、ローさんは常識ってもんを考えて下さい!てか昨日ッ…あああ味見は冗談って…!!」


「……ハァ……萎えた…」


「はぁああ?何その、完全に私が悪いみたいな雰囲気…!」



寝起きでいきなりセクハラ行為を受けたと思ったらこの態度か…!信じらんない。ていうか凄いムカつく。何か勝手に盛り上がって襲ってきといて、もう既に自分はベッドから出てチャッチャと着替えてたりするとこもムカつく!!

(いや、決して襲われたかったワケじゃなくて…!)

いくら船長だからってイケメンだからって、ちょっと調子に乗りすぎなんじゃない!?そう思って鼻息荒く飛び起きれば。



「っへぶ…!!」


「その貧相な身体、つなぎで隠して布団から出て来い」


「いったぁあ〜…って、…へ?」



いきなり顔面に直撃した白い何かが、ボトリと布団の上に落ちる。そのまま視線を落とせば視界に入ってくるのはキャミソール一枚のほぼ半裸状態の上半身。



「…ぎ、ぎゃぁあああぁあぁああ!!」



自分でもベタだとは思ったけど、思わず胸の前で両腕をクロスして叫ばざるを得なかった。




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