アイアイ、キャプテン!




「お〜いナマエー!飲んでっかぁ!?」


美味しい料理に夢中になっていると、ジョッキ片手にシャチが上機嫌で肩を組んできた。てか、酒くさっっ!…もう言動が完全に酔っ払いのソレじゃん…。


呆れながらも、ふと気になっていた疑問をぶつけてみる。



「ねぇシャチ、ベポ知らない?さっきから全然見ないんだけど…」


「あ〜?ベポ??そういや居ねぇな…船長とお前がここに来る前から見てねーぞ?」



はて?と首を捻りながらもグビグビとジョッキを傾けることは忘れないシャチ。…どんだけ酒好きなんだよ、コイツは。



「ベポなら甲板にいると思うぞ」



プレート皿に色とりどりの料理を取り分けてくれたものを差し出しながら、ペンギンが口を挟んできた。



「あ、ありがとうペンギン!…じゃあまだご飯食べてないのかな…」


「あぁ、騒ぐ気にならんから外の空気吸ってくるって言って出て行ったままだからな」


「そっか…。…ねぇ、もう一枚お皿貰ってもいいかな?私、ちょっと行って来る!」



きっと一人ぼっちで甲板にいるだろう白熊に運ぶための料理を取り分けていると横からローさんの腕が伸びてきた。


「ナマエ、その海王類のハム多めに入れてやってくれ。ベポの好物だ」



返事をしようと何気なく顔を向ければ、そこにあったのはあのニヤリって笑顔じゃなくって。帽子から覗く口元がすごく緩やかな弧を描いていたのでちょっと驚いた。


…なんだ、そんな表情も出来るんじゃん。


何だかんだで、ベポには甘いんだろうな。ううん、ベポだけじゃなくて…きっとクルーみんなのことを大切にしてるんだろう。


いつもそうやって笑ってればいいのにね、なんて心の中で呟きながらも何だか嬉しくなってほっぺたが緩む。



「なァ、ナマエ」


「…何ですか?」


「ベポを助けてくれたこと、あらためて船長として感謝する」


「ローさん…」


「最初は暇潰しになりゃいい、くらいのつもりでお前を船に乗せることにしたが…」



予想していなかった感謝の言葉に目を丸くしていると…本日二度目のローさんの手のひらが、ポンと頭の上に乗った。



「ナマエ、今日からお前はハートの海賊団のクルーだ。船長である俺のため、同じ船に乗る仲間のために尽くせ」


「……!」


「返事は」


「……アイアイ、キャプテン!」



ベポを真似て返事を返してみれば、フッと笑ってローさんが頭をわしゃわしゃと撫でてきた。


分かったらさっさとそれ持って行って来い、と言って背中を押してくれたローさんの手のひらはあったかくて、何だか頼もしく感じた。




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