だってこれが今の現実なわけで




三人を見送った後、シーンと静まり返った物置をぐるりと見渡してみる。



「……どうしよう」



さて、まずはどっかに隠れないとね。…って部屋を見てみたはいいけど、小さな箱型のソコには身を潜めるスペースなんて無い。

単なる物置だからか、部屋の扉には鍵も付いていない。
よって安全性ゼロであります隊長!…と心の中で敬礼してみたら、虚しくなった。


つーか隊長って誰やねん。


ここは白ひげ海賊団じゃないよー。
マルコ隊長もエース隊長もいないよー。


あれ…私、なんかトリップしてくる場所間違ったのかな?アハ!


…駄目だ、非日常的な出来事の連続すぎてテンションがおかしくなってるのが自分でも分かる。て言うか、こんなしょーもない一人ボケツッコミを繰り広げてる場合じゃないんだってば。


――そう、現実逃避的にテンションで乗り切ろうとしたところで……船内へまでも届く怒号、鈍くぶつかる金属音に、血の匂い、それに気付かないほどバカじゃない。


正直な話、すっごく恐い。

だってほんの数時間前まで、平和な現代日本でのほほんと暮らしてたフリーターだったんだからさ。


そりゃ確かにまだ、これって夢じゃない?って気持ちはある。でも例えこれが夢の中だったとしても、私の意識は今此処にあるワケで…。

何度瞬きを繰り返してみても、視界に映る景色に変化はない。これが今の私の現実なんだって思ったら、目を背けるワケにもいかない。


よし!と気合いを入れてなけなしの勇気を奮い立たせると、隠れ場所を探すために物置を出た。あ、不本意ながらペンギンから預かっている海賊人生ゲームとやらももちろん一緒に持ってね!


幸い戦闘は船の外で行われているようで、船内には人っ子一人いない………って、ぁあああん!?


ギャー!つなぎ着てないガラの悪そうなオッサン二人組がこっち向かって歩いて来てるー!!



「あっおい!女がいるぜっ!」



ひぃぃいぃ!早速見つかったぁぁああ!
こ、これは…逃げるが勝ち!!


右も左も分からないままに船内を夢中で走り抜け、目の前に現れた扉をえいやっと開け放つ。


――と…、


ギャーー!!!間違った!!
船内から出てどうすんの、私のバカ!


目の前に広がる景色は、敵味方が入り乱れての大乱闘。ちょうどすぐ目と鼻の先には機敏に蹴りを繰り出す白熊の姿。す、すごい迫力…。


…とそこへ、ベポの背後を狙う男の姿が視界の端っこに映った。

それを見た瞬間、震えながら立ち竦む両足は勝手に地面を蹴っていた。



「危ないっっ!!!ベポ!」



――ドンッ!!



ベポに体当たりしたナマエの肩先を、銃弾が掠めた。




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