海賊は悪い奴ばかりじゃないらしい




ペンギンが私の部屋になるであろう物置を片付けてくれている間、私は倉庫に行くというシャチに便乗して船内を案内してもらっていた。



「ねぇシャチ…さん、私…ベポに何て声かけたらいいのかなぁ…?」


「あ?シャチでいいよ、さん付けなんて気持ちわりぃだろ!」


「…あ、うん。分かった、ありがとうシャチ!でね?ベポなんだけど…」



そう実は…さっきの白熊の悲しげな表情が胸に引っかかって、ネガティブモードだったりするのだ。



「…んー…あ〜まぁ船長がああ言ってんだから、ナマエが気を遣う必要はねぇよ」


「でもさ、ベポはローさんを想ってあんなこと言ったワケでしょ?」


「まぁな、アイツは本当に船長のことを慕ってるからな。…ベポに限らずこの船に乗ってる奴等は全員そうだ」



みんな船長に惚れ込んでるし、船長は絶対的な存在なんだよ…と語るシャチの表情も、ローさんに対する憧憬の念に溢れていた。



「そっか…凄いね、ローさんは。…みんなも凄いよ、私とそんなに歳は変わんないハズなのにさ…自分の道をちゃんと歩いてる気がする」


「…ははっ、そうかぁ?海賊なんて、はみ出し者の集まりみたいなもんだけどな!」



照れくさそうに鼻を掻きながら笑うシャチは、でもどこか誇らしげだ。


漫画で見た時は、お揃いのマークが入ったつなぎなんて恥ずかしくないのかな…って失礼ながら思っちゃったりしたけど。


こうやって実際にハートの海賊団にやって来て、生身のみんなと触れてみて初めて分かった。


ハートのマークはお互いを信頼してる印で、絆で、彼らの誇りなんだ…きっと。


そんな中で私みたいな怪しい人間が突然やって来たら、そりゃベポだって警戒するよね。それが正しい反応だもん。



「…あー…でもよ、」


「ん?」


「そんな風に言ってくれてサンキュな、俺達のこと」



前を歩くシャチが、不意に振り返ってニカッと笑う。

…ていうか、海賊のくせに何て人の良さそうな笑顔なんだ、コイツ。


何だかお揃いのマークを胸に掲げたシャチがとても羨ましく思えて、ちょっと悔しくなったから前を向いた瞬間に膝カックンをお見舞いしてやった。



「うはっ!…てめっナマエ、何しやがるコラ!」


「ぷぷっ…シャチってば、油断しすぎ〜」




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