それから…




――コンコンッ…ガチャ、



「ナマエ〜?お昼ごはん持って来たよー!」



開いたドアから顔を覗かせたのは、ふわふわの毛並みに覆われた両手で食器をのせたトレイを器用に持つ白熊。



「ベポありがと〜!今日のお昼は何かなーっと」


「今日はね、海鮮スープスパ。海王類のハムもあるよ」


「わぁ、いい匂〜い!!もうお腹ペコペコだよ」



船長室のベッドへと運ばれてきた昼食。嬉々としてスプーンとフォークを両手に構えた瞬間、



「…おい、三食昼寝付き」


「んじゃ早速いただ「てめェの事だ、ナマエ」



食事を中断させられて不機嫌な私の視線の先には、もちろんもこもこ帽子を被ったローさんの姿。



「…ちょっと!人をニートみたいに言わないでよね!これでも怪我人なんだから」


「だったら怪我人らしく大人しく寝てろ、ったく…ベッドの上散らかしやがって」


「もう、小姑みたいにうるさいんだから…!」


「あァ?何だと?」


「でもほんとあの日は胆冷やしたよ!ナマエ、キャプテンに抱えられて船に戻って来たと思ったら、全治一週間の全身打撲だったもんね」



一触即発の不穏な空気を察してか、デザートのりんごを剥きながらベポが笑う。



「あはは、心配かけてごめ〜ん」


「…あの高さから飛んだくらいで全身打撲になれる、お前の運動神経が俺は心配だ」


「ローさんじゃあるまいし、咄嗟に受け身なんて取れるわけないじゃん!」


「…で?お前は安静にしろっつー医者の言い付けも守らずに、一体何やってたんだ?」



顎で指し示すローさんの言う通り、ベッドの上にぶちまけられていたのは――向こうの世界で使っていた私のショルダーバッグとその中身。

そう、こちらの世界へやって来た時に持っていた荷物のすべて。



「あ、うん。これはもう必要ないかなって…」


「は?必要ねェつっても…お前、」



――バタバタバタッ――…ガチャ!!



「おいナマエ!持って来たぞー!!」



ノック無しに勢い良くドアを開けやって来たのは、サングラスにキャスケット帽の彼。



「…おいシャチ、ノックくらいしやがれ」


「わ、す、すんません…船長っ」


「ナマエ、調子はどうだ?」



シャチに続いて部屋へ入って来たのは、大きな麻袋を小脇に抱えたペンギン。うんうん、どうやら頼んでいたモノを持って来てくれたらしい。


この世界で暮らすと決めてから、どうしてもやっておきたいことが私にはあったのだ。




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