そんな狡いあなたの傍にいたい




武器屋を出た私とローさんは、あてもなくぶらぶらと街を散策していた。

たまに露店を冷やかしたり、面白そうなお店があれば覗いてみたり…何だかとても穏やかな時間が流れる。


――…ずっとこんな風に過ごせたらいいのになぁ。


そんなことを考えていれば、隣のローさんが大きな欠伸をひとつ。そしてその後ぽつりと呟いた。



「たまにはこんな風に過ごすのも悪くねェな」



私と同じように感じてくれていたローさんに、何故だか無性に嬉しくなって、頬が緩むのを止められない。



「おい…何だそのだらしねェツラは」


「だらしないは余計!……私も同じこと考えてたんですーっだ」


「フフ…そうかよ」



イーッと歯をむき出して文句を言えば、ローさんが小さく笑う。てっきりバカにしたり、からかわれるもんだと思ってたから拍子抜けだ。


何だか目の前で穏やかな笑みを浮かべるローさんを見てたら、自分の気持ちを言ってもいいんじゃないかって思えてくる。


――…私、このままこっちの世界に…ローさんの傍に、居たいよ。迷惑じゃない…かな?




「ねぇ、ローさん…」


「あ?」


「あのね、私……」












「おい!あれはハートの海賊団トラファルガー・ローだぞ!」




ドクドクとうるさい心臓を押さえながら絞り出した私の言葉は、海兵の無粋な声で見事なまでに遮られた。



「チッ…ナマエ、話は後だ。逃げるぞ」


「ろ、ローさん…!」


「お前は自転車で先に戻ってろ、俺はコイツらを片付けてからすぐ戻る。応援でも呼ばれちゃ面倒だ」


「…やだっ!ローさんも一緒じゃないとイヤ!」


「顔が割れてねェナマエ一人の方が逃げやすいんだよ、いい子だから先行け」



嫌だと駄々をこねる私の額に、ローさんがそっと唇を落とした。

軽く触れたそこからじわじわと広がる熱に顔が真っ赤になったのが分かる。


今そんな表情で、声で、言葉で、こんなコトするなんて…ローさんは狡い。



「…っ…、絶対すぐに追いかけて来てよっ!?」


「当たり前だ」



ニヤリと不敵に笑ったローさんに背中を押されて、私は全速力で自転車を漕ぎ始めた。



「あっおい、女を逃がすな!」


「おっと…お前らの相手はこっちだ、……ROOM 」





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