はじめてのプレゼント ガラスケースにいくつも並ぶ、装飾が施されたナイフ。それは実戦向きというよりは、装飾目的の強い細工の凝ったもの。 いつもなら立ち止まることなんてない。だが、ナマエに持たせるには丁度いいかもしれない――そう思ってガラスケースを物色していると。 「わぁ…綺麗!なんか武器って言うより宝飾品って感じだね」 「確かに実用性より、装飾性重視って感じのデザインだな。女が好きそうだ」 「いーじゃん、女の子はキラキラしたのが好きなの!」 ガラスケースを見つめるナマエの瞳が、オニキスを埋め込んだようにきらりと輝く。つくづく女はこういうキラキラしたもんが好きだ。 ピアス、ネックレスに指輪―…今までに女から強請られて、買って来いと金を渡したことはあっても、自ら買い与えたことは無かった。 理由は簡単。ガラじゃねェってのもあるが、そこに特別な意味を求める女が煩わしいから。 だが今はどうだ。自らの贈り物を、ナマエに肌身離さず持たせたいと―…そう願う俺自身が確かにいる。 「別に悪いとは言ってないだろ。フフ…買ってやろうか?」 「へっ…?や、いいよ!私なんかが持ってても使い道ないし!」 「バーカ、こういう飾りが付いてんのは女が護身用に持つのに丁度いいんじゃねェか」 「…護身用って…そんなの、使う場面ないよ」 「護身用つっても、飾りみたいなもんだ。一つくらい持っておけ」 使い道がないから要らないと遠慮するナマエを押し切って、カウンターの中で刀を磨いていた店のオヤジを呼ぶ。 「よぉ、兄ちゃん!あんたハートの海賊団のトラファルガー・ローだろ?」 「俺のことを知っているのか」 「うちの商売は海賊も大事な客だからな!手配書チェックは欠かさねぇのさ」 「へェ…仕事熱心なこった」 「彼女へのプレゼントなら、安くしとくぜ?」 「クク、商売熱心だな。じゃあこれを貰おう」 ナイフの柄に好きな文字を彫れると言う店のオヤジに、ナマエの名前を入れてもらう事にした。 ナマエが着ている洋服や靴、鞄―…纏う香りでさえも、その身につけるものはすべて俺を連想させるものであればいい。 知らず知らずの無意識で芽生えた支配欲――それを向けるのは、ただ一人だけ。 |