聞きたい、聞けない、すれ違い




―…チリンチリン〜♪

二人乗りの自転車が、賑やかに街の大通りを横切る。



「ちょっとローさん!何でまた私が前なんですかー!さっきの優しさは幻!?」


「うるせェ、豚になりたくなかったらバクバク食った分しっかり消費しやがれ」


「なっ、乙女に向かってブタとか!どこに置き忘れて来たんですか?デリカシー」


「おいナマエ、そこの角の店に自転車つけろ」


「くっそ、タクシー感覚ですか!あーハイハイ、着きましたよっと…、ってここは??」


「入れば分かる」



そう言って扉を開けるローさんを追って店内に入れば――決して広くない店内に所狭しと並ぶのは、ありとあらゆる武器の数々だった。


興味の向くままキョロキョロと視線を動かす私を置いて、ローさんはぐるりと店内を見て回る。


時折気になるのか、飾ってある刀を利き手で持って構えてみたり。

その姿はまるで、お気に入りの玩具を見つけてはしゃぐ子供のようにも見えて…ちょっと可愛いな、なんて思ったりした。


そしてゆっくりと店内を一巡した後、中央に置かれたガラスケースの前で立ち止まるローさん。


何を見ているのか気になって覗き込んでみれば――柄の部分に装飾が施してある、武器と呼ぶのが躊躇われるほど美しく洗練されたナイフが整然と並んでいた。



「わぁ…綺麗!なんか武器って言うより宝飾品って感じだね」


「確かに実用性より、装飾性重視って感じのデザインだな。女が好きそうだ」


「いーじゃん、女の子はキラキラしたのが好きなの!」


「別に悪いとは言ってないだろ。フフ…買ってやろうか?」



てっきり自分が欲しくて見ているのかと思えば、そうじゃなかったらしく。

ローさんに買ってやろうかなんて言われたけど―…何だか昨日から買ってもらってばっかだし、第一ナイフなんて使う場面もなさそうだ。



「へっ…?や、いいよ!私なんかが持ってても使い道ないし!」


「バーカ、こういう飾りが付いてんのは女が護身用に持つのに丁度いいんじゃねェか」


「…護身用って…そんなの、使う場面ないよ」



だって、ローさんが傍にいて守ってくれる―…そうでしょ?違うの?


ねえローさん、本当はどう思ってる?私が元の世界に戻ったほうがいいと思ってるのかな…?


口に出しては聞けない、ローさんの気持ち。その答えを聞くのが怖くて、そっと睫毛を伏せた。




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