未知との遭遇




魔術師バジル・ホーキンスと言えば、ローさんよりも賞金の高いルーキーの一人。

漫画で見た通りの無表情に思わず会釈をすれば。後ろに立っていたローさんが、持っていた刀の先っぽで小突いてきた。



「なに挨拶してんだよ、さっさと行くぞ」


「え、でもホーキンスさん、悪魔祓いに来てくれたのかも」


「悪魔なんてどこにいんだ」



無言で指差す私に、こちらも無言でヘッドロックをかけてくるローさん。ちょっ痛い痛い、締まってる!首!!


呼吸の出来ない苦しさからジタバタ暴れていると、静かに声が発せられた。




「…死の外科医、トラファルガー・ローか」



私たちをじっと見つめていたホーキンスさんが顎に手をやり、ふむ…と独りごちる。



「カードが告げた、未知との遭遇とは…このことだったのか…?」


「厄介事はご免でな、用がねェなら俺達はもう行くぜ」


「――待て」



そう言ってローさんが手にしていた刀を担ぎ直すと、ホーキンスさんが呼び止めた。正確には、ローさんではなく私を――



「娘、お前……どこから来た?」



ピクリと片眉を上げたローさんが、鋭い視線をホーキンスさんへと注ぐ。

刺青の入った見慣れた手が素早く私の腕を掴んで、庇うように自分の背に隠した。



「別に危害を加えようというのではない。ただ、カードが告げていたのだ…お前との出会いを」


「え…っと?」


「……おい、ナンパなら他を当たりやがれ」


「娘、少し占わせてもらえないか」



ホーキンスさんは砂浜に流れ着いていた流木に腰掛けると、苛立つローさんに構うことなくカードを展開し始める。


目の前に立つローさんから発せられる、ピリピリとした空気に私だって気付いてはいるけれど……

これからホーキンスさんの口から告げられようとしている内容を、聞き逃してはならない―…何故だかそんな気がして。


淡々とカードを並べていくその姿に、じっと見入った。




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