決定的モーニングショット




――…あったかくて…気持ちいい、あー…ずっと、こうしてたいな…――


二度寝というヤツは最高に幸せで、最高に罪作りなヤツだと思う。だって現に今も浅い眠りの淵で漂う私を、ゆりかごのように心地よく揺らしている。


――なんて幸せな気分に浸っていたら、遠くの方から聞こえてくる騒がしい足音。



―…ドテドテドテッ――バタンッ!!



「ナマエー!起きてるー?朝ご飯冷めちゃうよー!」


「…ん〜…?……ベポ…?」



眠い目を擦りながら声のした方を向けば。そこに居たのは、案の定つなぎを着た白熊だった。



「おはよ!…って、あれっ?キャプテンいつの間に戻ってたの!?」



きっと私しか居ないと思って、ノックも無しに勢いよく扉を開けてしまったんだろう。私の身体に巻きつくローさんを見て、驚きながらも少し嬉しそうにベポが問いかけてきた。


黒くて円らな瞳が、何故かやたらとキラキラ輝いてる気がするんだけど――もしかして何か勘違いしてないか?この熊。



「あっ!これは…ちがッ!!」


「―…ん、…さっきからうるせェぞ…」



安眠を邪魔されて不機嫌そうなローさんが、もぞもぞと身じろぎながら私の上へ覆い被ってきた。

ぺたぺた無遠慮に私の身体や顔へ手を這わせてから、やっと見つけた―とでも言うように、首筋に落ち着く濃藍色の頭。



「――…ン…」


「っひゃ…!」


「あ…!」



突然の出来事に固まるベポと私を余所に…目を瞑ったまま、首筋に何度も唇を落としていくローさん。



「や、ぁ…ちょっ…ろぉ、さんッ」



自分の意志とは関係なく跳ねる身体が恥ずかしい。チクチクと肌に触れる顎髭がくすぐったい。ローさんの唇が触れた場所が、とにかく熱い。



「おっ、おれ!あ、ああの…邪魔してごめんっっ!!!」


「や、ちがっ…!待っ、」



――バッターン!!



来たとき同様、騒がしく去って行った白熊へと伸ばした腕は――虚しく宙を切った。





「…っこの、セクハラ船長ッ!!寝惚けてんじゃないっ!!」



ゴチン!――鈍い音のあとで、眼前に迫っていたローさんの閉じた瞼がゆっくり持ち上がる。そして一言……



「…痛ェ、」


「…〜〜くぅっ!!」


「……おい、何でお前の方が痛がってんだ」


「っうるさい!セクハラ石頭っ!!」



渾身の力を込めてお見舞いした、私の頭突きにビクともしないローさんは…さすが賞金首とでも言おうか。

おかげでこっちはガンガンと割れそうなくらい頭が痛いわけだけど。


何はともあれ、死の外科医様はやっとお目覚めの時間らしい。




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