味気ない、物足りない、君がいない 買ってきた洋服や日用品の整理が終わって、食堂へと向かった私。 けれど夕食時になっても、ローさんは戻って来ていなかった。 ぐるりと見渡した食堂はガランとしていて―…普段の騒がしさはすっかり影を潜めている。 さっき騒いでる声が聞こえたから、きっとみんな綺麗に着飾ったオネーサンのいるお店にでも行ったんだろう。 「ほいよ、特製ふわふわオムライスだ!嬢ちゃんにはプリンもおまけしちゃうぜ?」 「…へ?…あっ、ありがとう!」 ニカッと笑いながらコックさんが手渡してくれた、出来立てホヤホヤのオムライスのプレート。 美味しそうに湯気を立てるそれを見ても、食欲が湧いてこないのは何でかな…。 そう言えば…食事の時間、隣にローさんが居ないのは初めてのことだ。 機械的にスプーンを口に運んで咀嚼していくオムライスが、何だかとても味気なく感じた。 「お味はどうだい?」 「あ、…えと、美味しいです…」 「……ハハッ、嬢ちゃんは素直じゃねェな〜」 「……えっ…と?」 「顔に書いてあるよ、船長が居なくて淋しいって」 「…っ!!」 私自身まだ整理のついていない感情をすべて見透かすように、コックさんが優しく笑う。 穏やかに細められた瞳をじっと見つめていると―― 「料理ってのはなァ、ただ美味しく作れただけじゃまだ完成じゃないんだな。その料理を誰と何処でどんな風に食べるか―…それがとびっきりの隠し味になるのさ」 ぽんぽん、と軽く頭を撫でてから厨房へと戻って行ったコックさんの言葉。 ふわふわの卵と一緒に恐る恐る飲みこめば…お腹の中にストンと落ちて、少しだけ甘い味がした。 私は、ローさんに隣にいて欲しいって…思ってるの―…? |