当たり前のように心の中に居座る人




ローさんからお守りだと言って与えられたナイフには、柄の部分に綺麗な石の装飾と私の名前が入っていた。


今着てる洋服もそうだけど、こっちへ来てから私…ローさんに色んなもの買い与えられてばっかりだ。


ううん、身に着けるものだけじゃない。右も左も分からない私を船に置いて、あったかい食事と安心できる居場所をくれた。


そりゃ自分勝手で俺様な所もあるし、セクハラだって堂々とするローさんだけど…

そう言えば私、知ってる人が誰も居ないこっちの世界に来てからも、淋しいと感じたことは一度もなかった。


それはどう考えてみても、向こうの世界が恋しくなる暇さえ与えてくれない程、一緒に過ごしてくれたローさんのおかげだ。


まだ出会って少ししか経っていないのに…気付けばこの世界の全てにはローさんの匂いが、色が、しっかりと染みついていた。





「あぁそうだ!これは可愛いお嬢ちゃんに、オマケだ。受け取ってくれ!」


「……えっ?」



支払いを済ませるローさんと言葉を交わしていたはずの武器屋のおじさんに、不意に声を掛けられ驚くと。

おじさんはカウンターの下から取り出した、手のひらサイズの丸い玉を2個カウンターの上に置いた。



「これ、何ですか…?」


「ハッハー!俺ぁ、火薬の調合が趣味でな!この間作った試作品なんだけどよ、良かったら貰ってくれ!」


「火薬って…ば、爆弾ですか!?」


「いやいや、そんな大したもんじゃねェよ!ちょっとした遊び道具だ。まぁ困った時に投げてみるといいさー」



火薬と聞いて伸ばしかけていた手を慌てて引っ込めると、武器屋のおじさんは悪戯な表情を浮かべ片目を瞑った。



「……」


「あ、ありがと…おじさん」



そして厳ついオヤジのウインクに若干引き気味の私達を無視して、おじさんが言葉を続ける。



「あぁ、あと…今この街には海軍大佐が何かの視察で来てるみてぇだから、兄ちゃん達海賊は気をつけた方がいいかもな!」


「海軍が…」


「そうか、有り難い情報だ」


「ハッハー!いいって事よ!じゃあな!!また来てくれよ〜」



そして豪快に笑う武器屋のおじさんへもう一度だけお礼を言って、店を後にした。




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