上城と桜子
  

「泣かないで、泣かないで」



ぽたり、

僕の頬の体温よりも温かいモノが降ってきた。

それは頬の曲線により顎へ首へと伝い落ちていく。



『桜子』



名を呼べば彼女は肩を震わせ眉を下げ、更に大きな雫を目から作り出し落としていく。


ぽたり、ぽたり



重力に逆らう事なく再び頬に落ち伝っていく、その単純で此方の心情を掻き乱す行為を何度も繰り返す。

どうにかしようと考えた結果、己の狼狽を隠すかの様に笑顔を貼り付け止まることの知らない雫を拭った。



『僕は泣いてないよ、泣いてるのは桜子の方だ』

「違う、」



首を横に振るのと連動して色素の抜けた淡い栗色の髪が揺れる。

泣いてる姿でも、愛らしいなんて。





「私は代わりだよ」



(相変わらず鋭いんだね、キミは)



前に言ってた、桜子が上城と菊乃の代わりに泣く話

notゆりだ、はい



2011/10/19 13:33

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