※内容が不謹慎かも 「何をしているんだっ!!そんな事をするのは止めなさい!!!!」 三十路をとうに越えたであろうジャージを着た中年男性が、拡声器を片手にそう叫ぶ。 いつもの倍はいるであろうごった返した校庭にいる者逹の全ての視線の先は校舎の屋上である。 その屋上には事故防止の為であろうフェンスが聳え立ち、そのフェンスを越えて一人の少女が校庭に居る人間を見下ろしてた。 「あー、あー どうも先生こんにちは」 少女は何処からか拡声器を取り出し、それを介して返事をした。 その声は非常に明るく、日常で親しい者に使う声と同じだ。 中年男性は盛大に顔をしかめ、拡声器を持ち直してからまた声を発した。 「あいさつは要らないから、そんな事をするのは止めなさい!危ないですよ!!」 「何があったの!?ゆっくり落ち着いて先生と話しましょう、だからそんな危ない所にいないの!!」 中年男性の次はロングスカートを身に纏ったいかにも清楚な女声が張り裂けんばかりに叫ぶ。 周りからちらほら聞こえる少女逹の泣きそうな叫び声は恐らく少女と親しい者逹の物なのだろう。 それを覆うのはこの状況を面白がる者や、逆に恐れを抱く者、未だに現実を受け止められずこの状況を理解しきれない者などの言葉。 十人十色の反応が入り交じるこの空間を裂くかのように、少女の声が凛と響いた。 「あの、先生…」 「人生辛い事は沢山あるけど、それは乗り越える為に貴方が成長する為にあるのよ!大丈夫、先生は貴方の味方です、話してみてください、貴方はそんな危険な事を理由無くしてするような子じゃないって先生知ってますから!」 少女の言葉を遮り響き渡るそれはまるで聖書の言葉の如く、模範的な善人の言葉をである。 しかし、その美しさを呑み込みかの様な表情を彼女は何の躊躇いも無く浮かべた。 「せんせーい、間違ってますよー、しかもかなり この減点数だと赤点は確実ですねー」 その言葉にあれ程騒がしかった校庭が、一瞬にして静寂に包まれる。 その情景に少女は満足げに笑みを浮かべ、再び口を開いた。 「私は別に今の生活が苦しい訳じゃないですよ、寧ろ気が合う友人にそれなりに仲の良い家族、自分好みの本やゲーム、勉学も運動もそこまで苦手ではない普通、何処にでもいる女子高生である今がとても恵まれてて楽しいですよ。 だけどそれじゃあ駄目なんですよね、星座占いとかでその日は一位でも次の日からは順位が下がっているじゃないですか、あれなんですよ。 一位を得てもそれより上はないからあとは下がるしか選択肢はない、今の私の状況も同じなんですよ。多くのものを得ているから後は失う一方。私も人の子何で自分の身が可愛いんですよ。だからこの先失う位なら今この最高の状態で終わらせようって」 ここにいる全ての人間が何も反論出来なかった。 そんなの彼女のエゴに過ぎない、と何人かは思っただろう、だけど出来なかった。 彼女の余りにも人生を満喫したかのような満足感溢れる最高の笑顔に。 「嗚呼、もう時間です」 5.42秒後、 この箱庭に悲鳴が響き渡った。 滑稽、滑稽、実に滑稽。 何だ今の可愛らしい理由は、最高の状態で終わらせよう?いやいや何それ超サムイ、かっこわらかっことじ。 只この世界に楽しみが無くなったから“死”という未知の領域に興味が沸いただけだろ。 『あーあー馬鹿馬鹿しい』 私の言葉を聞き取った人間が果たしてこの学校にいるのか。 恐怖で溢れている校庭を教室の自分の席から見下ろす私の口元は上へと上がっていた。 傍観主を傍観する話が書きたい。 でも絶対カオスになりそう。 2011/10/03 19:37 |