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06 : SF




 鯉登くんと2人で坂道の多い町を歩きながら、私は傍にあった中学校を指さした。

「あ、ここってさっき海から見えてた学校?」
「ああ、そうだ」
「あの家からここまで通ってたんだ。こんな坂道を毎日って大変だね」
「足腰が鍛えられてちょうどいい。時々、迎えが来たしな」
「ふうん…」

 時折覗く鯉登くんのボンボンに頷きながら、私達は山頂へ向かって行った。この道はよく祖父と車で上り下りしていたという話をしながら、墓まで登りきり、道具を借りて墓の掃除をし始めた。

「なんじゃ、おいん墓のすぐ近くじゃっで」
「あ、そうなの」
「ここがおいの家の墓だ。そして隣が花沢どん家の墓じゃ」
「ふうん…」
「なんじゃ、知らんかったのか」
「毎年、ここ来る時は帰りに食べるあんみつで頭いっぱいだったんだもん」
「呆れた奴だな。墓参りする時は、隣の墓も参るのが常識じゃろが」
「え?そうなの?」
「学のない女だ」

 そう言って、鯉登くんはフンと鼻を鳴らした。掃除し終えた墓に線香を添えて火を点ける。ふと、鯉登くんが私に尋ねた。

「おい、供え物はあるのか?」
「あるよ、煙草とお菓子」
「少し分けてくれ。……いや、煙草はいらん」

 私は5つ入りだった饅頭の包装を剥がし、1つを鯉登くんに手渡した。鯉登くんはそれを受け取ると、自分の家の墓の前にしゃがみこみ大事そうにそれを供えた。

「盆にまた来っでな。今はこれだけじゃ。せっかく来たのに、何もせんのは兄さあも寂しかじゃろっで」
「え?鯉登くんのあに…お兄さん?」
「まあな」

 鯉登くんは立ち上がると「その話はその内話してやる」と言って、大きく伸びをした。

「暑いな」
「本当だね…」
「どこかに寄ってから案内してやる。さっきお前が言っていたあんみつの店は近いのか?」
「ちょっと歩いたところ。あの学校の裏くらいかな」



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