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+01 : SF







 授業開始10分前を告げる予礼が鳴り、隣の保健室で眠っているはずの飛鳥の元へ向かった。



「おい、飛鳥起きちょるか」



 ベッドの上に突っ伏して眠る飛鳥は身動ぎもせず、じっと眠っている。




「起きろ、飛鳥。体育は教室に変更なっちょったぞ」

「うう…。なんで…」

「何か言ったか?」

「なんで…がっこう……」

「はあ?」



 飛鳥はそれだけつぶやくと、またうんうん唸り始めた。



「飛鳥、お前まさか本当は起きてるのか?」



 ベッドの脇にしゃがみこみ、顔を覗き込むと、飛鳥は目を閉じてぐっすりと眠っていた。


(眉間にしわがよっちょる…)


 しわを伸ばすように親指を押し当てると、間抜けな声で「やめてぇ…うう…」と呻く。

 一体どんな夢を見てるんだ。

 あまりの間抜けぶりに、つい顔が緩む。



『ロビーで彼女に会いましたよ。なかなか可愛らしい子でしたね』



 ふと、脳裏に月島の言葉が浮かんだ。

 こんな間抜け顔を見ても、月島は同じ事を言うのだろうか。


 自分の顔を誉めそやす連中は今までに多くいた。

 が、人の顔の良し悪しなど、今まで考えた事もない。



「ふむ…」



 こうして見ると、飛鳥は自分とは違う。

 当たり前だが、肌は自分よりはるかに白いし、睫毛も長い。

 布団の中から覗く手足には節くれ立った部分はひとつもなく、折れるのではないかと不安になるほどに細い。

 時々忘れそうになるが、飛鳥は自分とは違う。
 紛れもなく、女子だ。


(唇も小さいのだな…)


 そこに手を伸ばそうとした瞬間、飛鳥は小さく身じろぎをした。


「………!!!」



 絶叫しそうになったのをなんとか堪え、慌てて手を引っ込めた。



(…ないを考えちょっどおいは!?)



 第一、人の寝顔をまじまじと見つめるものではない。

 まるで変態のそれのようではないか。


 しかし、その罪悪感に反して、もっと飛鳥の顔を眺めていたいとそう思った。


(なんだ…この気持ちは…?)



「おい、飛鳥。いい加減に起きろ…」



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