世界がおわる日

「明日、世界がなくなってしまうとしたら、あなたはどうするかしら?」
「君はまた訳の解らないことを……」
 そうは呟きながらも、セドリックは嫌そうにしたりだとか、呆れたりだとかそんな仕草は一切しなかった。ただ、真剣に考える。
 なになに、明日世界がなくなってしまうとしたら、だって?
 彼女がこうして何の脈絡もなく問いかけをしてくることは初めてではないし、セドリックがそれに応えなかったこともなかった。もしも答えを拒否すれば、彼女は機嫌を悪くする。仮に真逆なことが起こったとしたら、彼女は応えないかもしれないが、それでもセドリックはなんとかして彼女の望む答えを示したいと思うのだ。だって、僕は嫌われたくはないもの。
 セドリックが考えている間、彼女はじっとセドリックを見つめている。かわいい。
「多分、いつもと同じじゃないかな」悩んだ末、彼女が望む答えはとうとうわからなかった。もっとも、質問の意図さえわからないのだが。仕方がない、だって僕は僕なのだから。「朝起きて、朝食を食べて、授業を受けて、それから君と一緒にいるよ」
「あら、それだけなの? つまらないわね」
 どう答えて欲しかったんだい? なんて、セドリックは聞かない。ただ曖昧に笑うだけだ。
「だって、その日は最後の日なのよ。次の日はもう絶対に来ないの。それなのに、いつもとおんなじだなんて、つまらないわ」
「そうかな?」セドリックが笑う。「答えの変更ってあり?」
「しょうがないわね、許してあげる」
 セドリックは、ううんと考え直すそぶりを見せる。
「そうだな、多分僕は、君をいっぱい愛するんじゃないかな。でも、それっていつもと同じだろ?」
「そうかしら?」
「そうだろう?」
「愛するって、具体的にどうするの?」
「大好きだって囁いたり、キスしたり、一緒にクランペット食べたり、そういうことさ」
 言っているうちに、恥ずかしくなってきた。きっと今、僕の顔は赤くなっているんじゃないかな。

「セドリック、明日は世界がなくなってしまう日だわ」
「そうかい?」
「そうでしょう?」
 ふと見た彼女の顔は赤く染まっていた。どうやら恥ずかしかったのは僕だけではなかったらしい。

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