シンオウ全体に響き渡る鐘の音。それは、刹那が住処とする亜空間にも届いていた。
毎年、百八回鳴る除夜の鐘。
「今年が終わるのもあと数時間か……」
長い時間を過ごしすぎたせいか、時の神だというのに日付の感覚が無いというのはどういうものか。
薄く笑いながら刹那は、一年の終わりを一人で静かに迎えようとしていた。
そう、静かに。
「だというのに……」
ついに堪忍袋の緒が切れた刹那は、今年一杯の鬱憤を全て上乗せする勢いで声を張り上げた。
「何故、ここに、貴様が居るのだっ!!!?」
――自分一人しかいないこの空間に無断で入り込んで尚居座っている、自分と対になる存在に向かって。
「うっせえなあ。さっきから同じこと何度も繰り返してんじゃねえよ」
「黙れ!! 貴様さえいなければ、私だって同じことを何度も繰り返し言うことなど無いわ!!」
さっきから横になり退屈そうに欠伸をする異空に、常日頃は冷静な刹那は怒鳴り散らす。
「何が悲しくて一年の終わりを貴様なんぞと過ごさねばならぬのだ! さっさと消え失せろ!」
これがいつもなら、異空が逆ギレし、二人とも本気のガチンコバトルが始まる所なのだが、この日は違った。
「いいじゃねーか。どうせお前は俺がいる限り、正月になっても晴れやかな顔一つ出来ねえんだしよ」
「……っ」
顔を合わせれば喧嘩三昧な二人。
せっかくの大晦日くらい顔を合わせたくないのは異空も同じなのだが、どうせなら刹那の住処にズカズカ入り込んでは刹那に一方的に嫌がらせし、新年の迎えを最悪の気分で迎えさせてやる。これが、異空の狙いである。
しかし、刹那にとってはそれだけではない。
それは――
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