照山くんと恐怖の図書室



『先生この後飲み会という名の出張だから、教卓に置いてある本返しといてくれない?』

我がクラスの担任、藤森先生がヘラヘラ笑いながら声をかけてきたのは、大体10分くらい前の話。

彼の言葉は疑問形だったが、僕らに断るという選択はほぼ残されていなかった。
その時教室にいたのは、偶々黒板でダイナミック絵しりとりをしていた僕と小村君だけだったのだ。話しかけられたのは、丁度小村君が「ラッパ」に続ける絵をブリーフにするかトランクスにするか悩んでいる時だった。

「もう、なんで僕たちが…」
「怒るなって!おれがまたコンビニの店員のモノマネやってあげるから」

小村君はそれが僕の心に何らかの変化をもたらすと思ったらしく、決意に満ちた表情をしていた。
因みに過去にこのモノマネをやって欲しいと頼んだ記憶はない。彼の言う「コンビニの店員」がどのコンビニのどの店員を指しているのかもいまいち解らない。

「別に嬉しくないけど…ああもう、この本なんでこんなに重いんだよっ」
「大丈夫か?ほら、重いならおれのとこに乗せていいよ」
「いやだ」

正直結構本気で重かったし腕も疲れていたが、彼の言葉に甘える訳にはいかなかった。僕のプライドにかけて。
ここで小村君の言う通りにしたら弱っちいキャラクターが定着してしまう。身体が世間の平均からみたら少しだけ…ほんの少しだけ小柄な僕は、不名誉なレッテルを貼られないようにこういうところで地道な努力を欠かさなかった。



「失礼しまーす」

図書室はがらんとしていて薄暗かった。
ここは普段勉強している生徒達で比較的賑わっているから一瞬だけおかしいなと思ったけれど、今日は先生達の飲み会があるらしかったから、きっとその関係で図書委員の仕事が休みになったのだろう。

うん、どんな学校だよまじで。みんなして飲み会好き過ぎるわ。

「誰も居ないのかな…」
「机空いてるから本下ろしちゃおうよ」
「ん」

長い机の一角に本の束を下ろすと、急に重しがなくなった腕が勝手に上がっていきそうになった。ふわふわして気持ち悪い。

「このままにしといて大丈夫かな?」
「いいと思う。…はー、おれお腹空いちゃったよ」

ああ、早く帰りたいのねと笑いながら教室に戻ろうと身体の向きを変えた時、図書室の奥にある部屋のドアが派手な音をたてて開いた。驚いた僕と小村君の肩が跳ね上がる。



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