コーヒーとカフェオレ
「照山、おれと勝負しないか!?」
ある日の下駄箱前で、僕は今まさに一緒に帰らんとしている人物にそう告げられた。
その人物とは、言わずもがな小村君である。
「…勝負?なんの?」
「じゃんけん!」
「………」
「じゃあいくぞ、最初はぐー!!」
「ええ!?っちょ…まだ何にも言ってないのに…!!」
「じゃーんけーんぽいっ!!」
人間は、準備が出来ていないままいきなりじゃんけんをさせられると高確率でグーを出すと聞いたことがあるような気がしなくもない。
それが正しいのかどうかはよく解らないが、慌てていた僕が出したのはグーだった。
対する小村君が出したのは、チョキ。
「…あれ?なんか僕が勝っちゃった」
僕は拍子抜けしたように言った。実際拍子抜けしていた。
てっきり小村君も、上記の謎の原理に基づいたじゃんけん必勝法(仮)を僕相手に実践してみたかったのかと思っていたが、どうやら違うようだ。だって僕が勝ってるし。
「うわあ、また負けちゃった…」
「また?」
頭を抱えている小村君の言葉を拾う。
「また」という言い回しは、以前にも彼がじゃんけんで負けているということを意味している。
「さっき、風太とじゃんけん十番勝負したんだよ。…だけどおれ一回も勝てなくてさ…」
「全敗!?それは…相当運が無かったんだね…」
「悔しいから華火とか生徒会長にも戦ってもらったんだけど、やっぱり全敗だった…」
生徒会長まで巻き込んでいることには、敢えてつっこまなかった。
「…そんな事、あり得るのか…?向こうがなんかの裏技使ってたとか、そういう感じなのかな…」
「おれもそういう仮説を立てて、今照山に勝負を挑んでみたんだが…」
一連の流れを知らない僕までもが勝ってしまった、と。
そういうことか。
「まあまあ…僕とは一回しか戦ってない訳だからさ、偶々ってこともあり得るから…」
「そ、そうだな…じゃあ、照山とも10回やっていいか?」
「いいよ。…よし、じゃーんけーん」
* * * * * *
「……………」
「……………」
僕と小村君は、互いが10回目に出したパーとチョキを見つめて青ざめた。
「…照山」
「…うん」
「………ふえ、」
「な、泣いちゃだめだよ!!しっかりするんだ小村くん!!」
目に涙を浮かべている小村君の頭を宥めるように撫でた。
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