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…そう、小村君は僕との勝負にも惨敗してしまったのだ。勝ったのに全然嬉しくない。寧ろ怖い。小村君を余計慌てさせたらいけないからと平静を装ってはいるが、さっきから酷い汗だ。
「ま、まだ10回じゃないか!!…ほら、よく言うじゃないか、11回目にツキが回ってくるっていうね!!ラッキー…ラッキーイレブン?っていうね!!ねっ!!」
「そ、そうかな…?」
「そうだよおおおお」
いやでたらめだけど。
何だよラッキーイレブンって。
「そ、そうだ!!あれだよ、たぶん小村くんには絶対に勝ってやる!!っていう気迫が足りないんだよ!」
「気迫?」
「例えば…歩きながらじゃんけんして、コンビニ前の自販機に着くまでに一回でも勝ったら僕が飲み物奢るよ!!…って言ったら、何もないより勝ちたいと思うでしょ?」
「…ほわあぁぁぁぁぁなるほど!!それだ!!流石照山!!奢ってくれるのか!?」
「うん、勝ったらね」
「なんか…なんか燃えてきたぞ!!勝負だ照山!!」
いい流れだ。
コンビニ前までっていったら、それなりの距離がある。幾ら小村君がついてなくたって、そこまでに一度くらいは勝てるだろう。
………と、思った僕が甘かった。
何度も何度も繰り返してやってみたが(僕らの姿は道行く人々からみたらさぞかしシュールだったことだろう)、どんなに小村君を勝たせるよう念じてもやっぱり僕が勝ってしまうのだ。
そういう経緯で、今小村君は自販機の前で愕然としているのだった。
「…おれが何を…何をしたっていうんだ…」
「…驚異的な運の無さ…」
崩れ落ちる小村君はそのままに、僕は自販機にお金を入れた。
「そういや今朝の星座占いではいて座が最下位でさそり座がその次だったっけ…」
「小村君って何座だっけ?」
ボタンを押すと、がこん、と音がして缶がひとつ落ちてきた。
「いて座とさそり座」
「なんで2つ!?」
「おれの誕生日、ちょうど境目の日だから占いによっていて座だったりさそり座だったりするんだよ」
「へえ」
もう一度同じ動作を繰り返す。がこん、と音がしてから、ひとつずつ取り出すんだったと後悔した。お釣りを取ってから取り出し口との格闘を開始する。
「そうだ…多分そのせいだ!うんそのせいそのせい!!」
「そりゃ良かったね…はい、これ」
「んえ?」
やっと取り出した缶の片方を差し出すと、小村君はせわしく瞬きをした。
「い、いや…おれ一回も勝てなかったし…」
「慈愛の一缶」
「でも照山に悪「慈愛の一缶」」
「……………」
僕と小村君は、暖かいそれを飲みながら帰り道を並んで歩いた。
照山に奢って貰えるなんて、今日も捨てたもんじゃないな、と小村君が笑った。
そんな顔をされると今更恥ずかしくなってきて、結局誕生日いつなの?と聞いた。
##おわり。
「11月22日!!いいふーふの日だぜ!!」
「だぜって…」
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