「あー…小村くんね、『メロンパン買うからちょっと待ってて!』って出て行ったよ」

本のページを捲りながら呟かれた言葉にそうですか、と返して、彼の隣の席に座った。
例の噂について話をするなら、二人一緒の時のほうが楽だ。

「…ふあ」
「照山さん、眠いんですか?」
「ん…今日は朝のアレで疲れ果てちゃって…」
「少し眠ってはどうですか?小村さんが来たら起こしてあげますよ」
「ほんと?」
「ほんとです」
「わあ…ありがとう華火さん、そしておやすみ…」

相当疲れていたのだろう、照山さんは全て言い切る前に上半身を倒して寝る体勢になり、それから数分で寝息をたて始めた。
暇なので照山さんが読んでいた本を拝借してみると、先月ニュースで取り上げられていた映画の原作だった。彼が『遂に映画化!』と書かれた派手な色の帯につられて購入する様子が頭に浮かぶ。
おそらく風太に色々話を聞いてきて、照山さんは案外適当なところもあるらしいと聞いたせいだろう。

「てるっ………あれ?華火」
「あ、どうも」

勝手に借りた本を十ページも読み進めないうちに、いつも通りテンションの高い小村さんが戻ってきた。片手にメロンパンが握りしめられている。

「照山さんですが、疲れていたようでこの通り爆睡してしまいましたよ」

小村さんは今までより幾分か小さくした声でそっか、と呟きながら、照山さんの前の席に背もたれを跨いで後ろ向きに座った。

「…あの、小村さん」
「んん?」
「小村さんって…照山さんのこと、どう思っているんですか?」
「え?好きだよ?」
「………」

にこにこ笑顔でハッキリと伝えられ、少し困る。
そういう類の「好き」オーラがただ漏れなのは、この学園の生徒なら最早解りきっていることだ。
どう反応すべきか考えていると小村さんが言葉を続けた。


「照山は、おれの大事な友達なんだ」


「で」

ですよね、やっぱり。そうだろうと思っていましたよ。
…と答えようとして小村さんの顔を見た瞬間、言葉が喉に引っかかったように勢いを失ってしまった。

「ふへへ、変な顔」

眠る照山さんの頭を優しく撫でながら浮かべられた笑顔の中に、一瞬だが確かな痛みを感じた。
こんな辛そうな苦しそうな、痛そうな顔、一度だって見たことがない。

(違う、うそだ)

「小村さ、」
「…ん」
「あ、起きた」

色々聞こうとしたところで、照山さんがもぞもぞと動いて小村さんの手を掴む。



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