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「ど、どうしたんです」
「ああ華火さんか…さっきの課題、なんとか提出できたんだ」
「へえ、良かったじゃないですか」
「うん本当良かった…もう1日分の気力使い果たしたよ…」
力なく微笑むと、照山さんはゴン!と音を立てて机に頭を戻してしまった。
すっかり気が抜けているようだ。
「照山照山!おれ照山の似顔絵描いたんだよ!」
「そっか良かったネ」
「うん、すごい良かった!」
「へー」
小学生のようにはしゃぐ小村さんに視線すら向けず、机と仲良くなっている。
どうにも小村さんが哀れに見えて、ぼくは同情の気持ちを込めて彼の肩をポンポンと叩いた。
その後も休み時間が来る度に彼らの様子をチェックしてみたが、特に語るべきことは起きなかった。
小村さんのテンションが一番上がるであろうお昼休みですら、風太とぼくを含む4人でババ抜きバトルをしただけに終わった。
(…やっぱりあの噂は噂に過ぎなかったみたいだな)
帰りのホームルームを終えたぼくはそんなことを考えながら、朝より大分ゆっくりなペースで本日最後の偵察に向かっていた。
勿論何も起きないに越したことはないのだが、こうも手応えが無いとどうにもやる気が削がれていってしまう。
「お、華火。今日はよく会うな」
「はい、ちょっと此方に用がありましてね」
丁度教室を出ようとしていたらしい風太が、片手を上げてぼくに笑いかけた。
斜めに引っかけたスポーツバッグから、無理に押し込んだらしいぐしゃぐしゃのジャージが顔を覗かせている。
「そか、よく解んねえけど頑張れよ」
「風太も部活頑張って下さいね」
「おう」
に、ともう一度彼らしいお気楽そうな笑みを浮かべ、下駄箱の方へ歩いていった。
…そういえば、ぼくより近い場所に居るであろう風太は彼らのことをどう思っているんだろうか。
気になって声をかけ直そうかと考えたが、廊下で合流した仲間達と騒いでいる様子を見て思いとどまった。
彼のことだ、あんな噂など知るよしもないだろうし、知っても軽く笑い飛ばしてしまうだろう。
(そして、ぼくは彼のそういうところが少しだけ羨ましい)
「…あれ、小村さんは?」
肉まん組はぼくのクラスより早くホームルームが終わっていたらしく、教室の生徒の数はまばらだった。照山さんは自分の席で本を読んでいるが、小村さんの姿が見えない。
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