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BL的表現注意!!
私の弟はとてもかっこいい。
ブラコンっていうわけではないが、白い肌に少し切なげの目は誰が見ても麗しい容姿だった。
「おかえり、精一。」
「!!…なんだ、姉さんか。」
それはある日の出来事。
帰ってきた弟はどこかビクビクとしていて、私が声をかけると飛び跳ねるように後ろを向いた。
「どうしたの?なんか様子変だよ」
「…いや、何でもないよ」
弟は私から目線を反らすと、そそくさと自分の部屋に行ってしまった。
「やっぱり、おかしい…」
植物が大好きな弟はいつも家に帰ると、庭に行って花を手入れする。
どんなに忙しくても、熱が出ても、昔からかかさずやっていた。
その弟が今日は脇目も振らず部屋に籠ってしまったのだ。
「お母さん、精一がなんか変だ。」
「変ってどこが?」
「花の手入れもせずに部屋に籠っちゃった。」
「きっと思春期なのよ〜。そっとしといてあげなさい」
「精一は青春してるのね」なんて呑気な母は止めていた手をまた動かした。。
「(絶対、違う…と思う…)」
弟との仲はそんなに悪くないが、良くもない。
普段なら特に気にしない出来事だけど、でも今回だけは、なんだか胸のざわめきが止まらない。
その日弟は結局部屋から出てこなかった。
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翌日、弟は何事も無かったように…でもやっぱり変な感じで学校に行った。
そして帰ってきた弟は朝よりもスッキリした表情だった。
「…おかえり、精一」
「ただいま、姉さん♪」
「今日は何かご機嫌だねJ」
昨日と違う意味で精一が変だ。
「そんなことないって〜♪」なんて言いながらスキップして庭に向かう弟を見て、悪いけど本気で気持ち悪いと思ってしまった。
そして弟は珍しく鼻歌を歌いながら花に水をあげている。
私はその姿を陰から見ながらやっぱりおかしいと思ってしまうのだ。
「お母さん、精一が今日も変だ。」
「今日はどこが変なの?」
「鼻歌歌いながら花に水をあげてる」
「あら、今日は機嫌がいいのね。別に変じゃないじゃない」
「あの精一がスキップして鼻歌だよ!あの精一が!!」
「精一だって鼻歌ぐらい歌うわよ〜」
私が必死に言っても母は聞く耳を持ってくれない。
仕方がないのでこのモヤモヤを取るために自分で聞きに行くことにする。
≪コンコン≫
「精一、入るよ」
≪ガチャ≫
返事を待たずに部屋に入ってみると、弟は電話中だった。
弟は目でちょっと待てと言ってきたので大人しく待つことに…
手持ちぶたさになったので弟を観察してみると、姉弟でこうも顔を違うのかと改めて少しショックを受ける。
弟は母似、私は父似なので全く似ていない。
私はそこらへんにいそうなごく平凡な顔だが、弟は目鼻立ちがスッキリしていて笑った顔なんて悩殺ものだ。
今だって頬を染めながら笑う姿は女顔負けの美しさで……ん?頬を染めながら?
「うん、うん、ハハハッ、そんな事があったんだね」
「(せっ、精一の顔が赤い?!!)」
誰と電話をしているのか、弟はこれまた珍しく嬉しそうに話している。
いつも電話をしてる時は微笑むことはあっても頬を染めることはない。
「(これは…まさか、彼女?!!)」
母の言う青春をしちゃってるのか!
まぁ、それならはしゃいじゃうのも仕方がないだろう。
しかし、私でさえ彼氏がいないのに弟にちゃっかり彼女が出来ちゃうとはなんだか悔しい。
「それじゃあ、また明日……姉さん、お待たせ。何か用?」
やっと電話を終えた弟を思わずじっと見てしまう。
弟はそんな私の視線に思わずたじろぐ。
「なっ何?J」
「精一……好きな人できた?」
≪ガタガタ≫
「えっ!!なっなんで…!!いつから…!うわ!どうしよ、はずかし!!////」
「取り敢えず落ち着きなさいJ」
弟は思った以上にオーバーアクションを決めてくれた。
顔を真っ赤にしながら本棚にぶつかる姿は芸人顔負けだ。
……うん、これはもう100%彼女が出来ちゃったのだろう。
「(くそ、このリア充が!!)」
心の中で悪態付いていると、弟は照れくさそうにもじもじしだす。
「そうだな…姉さんには言っていいかな〜…」
その姿はさながら乙女のようで可愛い。
彼女の前でもこんな感じなんだろうか?
普段はかっこいい美少年でとおっているのに、乙女部分をさらけ出して引かれたりしてたら流石に可哀想だ。
彼女のことより弟のことをちょっと心配していると、弟は意を決したのかほんのり色のついた頬でこう言った。
「あのね、姉さん。俺…彼氏が出来たんだ」
…………………。
WHY??
「精一。お姉ちゃん、ちょっと耳が可笑しくなったみたい。もう一度言ってくれる?」
「彼氏が出来た。」
神経を全て耳に集中しても、弟の発言は変わらなかった。
どうやら幻聴ではないらしい。
「えっ…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
近所迷惑なぐらい私が驚いていると、弟は「きゃ!恥ずかし…!!///」と乙女な反応をしていた。
男なのにそんな反応も可愛いなぁ…
「じゃなくてねっ!!精一!あんたいつの間にホモになったの?!!」
「失礼だなぁ…俺は男が好きになったんじゃなくて、好きになったのが男だったんだよ」
「何ちょっといい風に言ってんの!?しかも彼氏って!相手は誰よ!!」
「テニス部の仲間だよ」
「そいつは!ホモなの?!」
「ううん」
「精一もその子もノーマルなのになんで付き合うことになってんのよ!!」
訳が分からない。
どういう経緯で付き合うことになったのか全く見当がつかなかった。
「俺も最初は悩んだんだよ、でも…もう止まらないぐらい好きになってたんだ。だから勇気を出して言ってみたら向こうも同じ気持ちで…」
しんみりした顔で言うから私も真剣に聞く。
「世間的には許されないけど、俺はそれでもいい!あいつと二人でいれるだけで嬉しいんだ!!姉さん…恋ってそういうものでしょ?」
「精一……」
そっか…最近の弟が変だったのは、弟なりに悩んでいたからなのか…。
そう思うと、弟が必死に悩んで出した答えなら姉として応援するべきなのかもしれない。
「って…いいこと言って締めようとしたって、そうはいかないわよ!!」
「あっ、バレちゃった?」
舌を出して悪戯っぽく笑う弟も可愛い…じゃなくてね!!
「弟がホモなんて…!!お母さんになんて言えばいいのよ〜…」
思わず出そうになる涙を顔を覆って隠すと、弟の方からすすり泣く声がした。
不思議に思って顔をあげると、弟はグスグスと泣き始めているではないか。
「せっ、精一!泣かないで、」
焦る私は頭を撫でてあげるとか定番な慰め方しかできず、弟はなかなか泣きやんでくれない。
「姉さん、なら、応援、ヒック、してくれると、思ったのに…グスッ」
「わわわわわわわ!精一!お姉ちゃんが悪かった!!」
「じゃあ…応援、してくれる?」
「……(きゅん」
涙目の上目遣いでお願いポーズをされる。
昔から私はこれに弱く、胸キュンしちゃうのだ。
「するする!お姉ちゃんは精一たちの味方だからね!!」
「そっか〜流石姉さん、じゃあ母さんたちには黙っておいてね♪」
「へっ?」
「俺、今からお泊りデートだから言い訳よろしく〜」
「ちょっ、精一?!」
「いってきま〜す」
ひらひらと手を振り行ってしまった弟に手を伸ばすも、それは空しく空を掴むだけになってしまった。
これは…うん…
「騙されたぁぁぁぁぁ!!!」
下から母が私を呼ぶ声がする。
この際言ってしまえばいいのだけど、私は律義にも項垂れたまま言い訳を考えるのだった。
弟の恋物語(やっぱり、弟は可愛いものなのだ)[ 1/2 ][*prev] [next#]
[mokuji]
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