もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ





side:伊作



「けほ・・・っ」


苦しそうな篤葉ちゃんの咳き込む声がする
昨日まで、まだ笑っていた篤葉ちゃんは、今日になって高熱を出した
今の篤葉ちゃんに、この状態が何度も続いて耐えられると思えない
もしかしたら無理をさせているのではとも思う
けれど、僕にはどうしようもないのだ、彼女が実家に戻って養生するなりする意思がなければ、意外と意地っ張りな篤葉ちゃんのことだから、家に帰ったりなんてしないだろうし


「篤葉ちゃん、飲める?」
「い・・・さ・・・くん・・・」


ぼうっとした用に宙をさまよわせる瞳に、視点が定まらないのだろうことが伺えた
それでも意識があり、きちんと意思疎通ができるのだから、それはさすが6年間くのたまをしているだけあるといえるのかもしれない
僕はぬるめの白湯に溶かした薬を、口元に持っていき、傾けて篤葉ちゃんに飲ませた
こういう状態だと、たまにこれで飲んでくれない子もいるんだけど、篤葉ちゃんは病気慣れてるというか・・・・まあ、そういうことがないから助かる


飲み終われば、ほうっと息を吐いて、篤葉ちゃんはごめんなさいと声に出さずに呟き、吸い込まれるように眠った
僕はその様子に、ふぅっとため息をついた

軽い睡眠導入効果と、咳に効く効果を併せ持つ薬を飲ませておいたから、これでしばらくは眠れるだろう
昨日の夜から、咳が止まらなくて眠れなかったみたいだけれど、篤葉ちゃんにとって体力が回復できないというのは致命傷だから、半分強制的に眠らせて体力を回復させないといけないんだ


「いさっくん、篤葉は大丈夫か?」


そろりと顔を覗かせたのは、小平太だった
僕は小平太に、今のところは寝てるよ、と伝えると、入っておいでよ、と声をかけた
小平太は恐る恐ると言った様子で篤葉ちゃんの横に座った
先ほどよりも幾分良くなった寝顔に、小平太は少しほっとしたような顔をしていた



友達として彼女が心配






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