もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

風邪の日注意! 前


双忍×主



「げほっ」
「ほーら、いっただろ、絶対風邪ひくって」
「う、っせ・・・げほっ・・・」


なら風邪人の部屋に来るなよ、といってやりたい
焦点の合わない目で三郎を睨む
けれどそれはただの強がりで、すぐにぐらりと世界が揺れる感じがした
せめて少しでも気持ち悪くならないようにと目をぎゅっとつぶった


「あぁもう、ダメだよ三郎、今は雪斗をからかわないの、めっ!」
「仕方ないな・・・じゃあ、水を替えてくる」
「うん、ありがとう三郎」


その会話のあとに、誰かが部屋を出て行く音がした
多分、三郎が部屋を出て行ったんだろう
けほ、と咳き込む俺を、雷蔵が心配そうに覗き込んだ


「本当に、大丈夫?雪斗」
「げほっ・・・へいきだよ・・・心配するなって・・・」
「でも・・・」


薄く目を開けると、ものすごく至近距離に雷蔵の顔があった
いつもならば驚いておでこをぶつけるとかやるんだけど、今日ばかりはそんなことをする気力もなくて


「・・・らいぞー、ちかい・・・」
「え、あ、ごめんね」
「・・・けほっ・・・そういいながら・・・そのままなのは、なんで・・・?」


なんだろう、ものすごく嫌な予感がしたんだ
例えるならばその目が捕食者のような・・・


「うんっとね、雪斗が可愛いなって思って」
「・・・らいぞ・・・?」
「いつもの雪斗はカッコいい感じのほうが強いけど、弱ってるときは可愛いよね」


・・・おかしい、コイツ絶対おかしい
うつしたんだろうか、とちょっとだけ心配すると、いきなり唇を塞がれた



「っふ・・・!?」
「ん・・・」


くるしい息ができない
でも、雷蔵の舌が歯を撫でるのが分かるから、迂闊に息が吸えなくて
それでもやっぱりくるしいから、息をしようと口をあければ、当然のように雷蔵の舌が俺の舌を絡めとった


「ふぁ、ぅ・・・っら、ぞ・・・っ」
「可愛いよ、雪斗」
「ひっ・・・」


にこりと笑う雷蔵はいつも通りなのに、それ以外はいつもと違う
雷蔵の手が着物のあわせを割って、俺の身体に触れる
熱で熱い身体に手が触れると、冷たいと感じて、俺は思わず悲鳴を上げた
その様子に、雷蔵はくすくすと笑った
こわい・・・!


「や、だ・・・たすけ・・・っ」
「雪斗は僕のこと、嫌い?」
「きらい、じゃないけど・・・っひゃ・・・」


雷蔵の手が身体のあちこちを触る
最初は上半身から、そこからするすると下へ下がっていく
嫌でも、俺はただでさえ風邪をこじらせて、平衡感覚なんて分からないし、身体もだるい
抵抗なんてできなかった
せめて、三郎が戻ってきてくれたら、雷蔵を止めてくれるだろうか


「んあっ!?」
「ね、雪斗、嫌がってても身体って正直なんだよ?」


雷蔵が足の付け根のあたりに手をやり、目的のそこに触れた
羞恥で俺は顔にかぁっと血を上らせる


「ふふっ、ホント、可愛いよね・・・ね、三郎?」
「っ!?」
「ホントになー、普段の気丈さはどこいったんだよって感じだ」


気がつかなかった
いくら風邪で朦朧としてて、なおかつ雷蔵に気を取られてたからって気配に気づかないなんて
・・・風邪治したら鍛錬しなきゃ・・・
そう思っていられるのはきっと、どこかで自分を客観的に見てるから
・・・そうじゃないとやっていられないって言うのもあるけど


「やだ・・・っみるな、よぉ・・・っ」
「却下、受け入れられないな」


三郎はそう言って、俺の言葉を無視して俺の顔を覗き込んだ


「は、ぅ・・・んぅ」


ちぅっと音がした
雷蔵とは違う短い口付け


「っさぶ、ろ・・・?」
「おま・・・それはないだろ・・・」


きっと雷蔵と同じように苦しいんだろうと思って身構えていたから、逆にそれだけの三郎に俺はビックリして、三郎の名前を呼んだ
すると、三郎は口を押さえてそっぽを向いた


「・・・三郎ばっかりずるい」
「え、らいぞっ・・・ぁ、い・・・っ!」
「あ、雷蔵ずるいぞ!」


俺は自分の身に何が起こったのか、一瞬分からなかった