死を悼みて幸せを願う 生物委員会での活動の最中のこと 前から病気がちだったらしい狼がついに息を引き取った オレはそれが凄く悲しくて、委員会が終わってもずっと泣いていたんだ 墓を作っても、なんだかそれは先輩達の嘘のような気がして むしろそうであって欲しいと思って オレはその狼の世話を良くしていて、凄く好きだったから 「ひっく・・・っく・・・」 墓の前で、目が解けてしまうんじゃないかって位涙を流して 流しても流しても涙がかれなくて それくらいオレにとっては、重大なこと そんなときに、がさがさと後ろの草が揺れた 「だ、だれだよ!」 「・・・目が真っ赤、腫れるよ」 その顔は、この間鉢屋と不破の仲を取り持ってた無表情のい組所属の御門だった 何で泣いていたのか、なんて聞かないで、一言、それだけ言って、きびすを返す なにがしたいんだかまったく分からなくて、オレはちょっとだけぽかーんとした でも、すぐに戻ってきた御門の手に握られていたぬれた手ぬぐいを見て、オレのために持ってきてくれたんだってわかった それをオレに手渡すと、御門は墓の前に膝を立てた 「帰命したてまつる 大愛染尊よ、金剛仏頂尊よ、金剛薩たよ、衆生を四種に摂取したまえ」 「御門・・・?」 「・・・あぁ、気にしないでくれ。・・・来世も、愛されるよう願っているよ」 どことなく雰囲気の悲しげな御門を呼べば、首を振って御門は立ち上がった 「ソイツは幸せだったよ、生物委員・・・竹谷に可愛がられて」 だから、そんなに泣くな そういってオレの頭を撫でた手は暖かくて "生きてる"と感じられた 冷たくない、血が通ってるんだ 「・・・うん、ありがとな、御門」 「いや・・・私は何もしていないさ」 それじゃあ、とくるりと背を向ける御門に、既視感 ・・・あぁ、そうだ、御門が教室に来たときと似てるんだ 雷蔵もこんな気持ちだったのか? 「御門っ」 「どうした?」 振り返って心配の声をかけてくれる御門に、オレは走って抱きつく 御門は危なっかしくもオレを受け止めて オレはぎゅっと御門を抱きしめる力を込めた 「オレと、友達になってくれっ」 そういえば、御門は少しだけ目を見開いて けれど、それもすぐにいつもの顔に戻ると、あぁ、よろしくと返された そして呼び名は名前で良いとも オレは遥人の手を握って、食堂行こうぜ!と引っ張った オレたちの後ろにある墓を、少しだけ振り返って、ごめん、と心中で呟いた でも、お前が好きなことは、嘘じゃないし、悲しんだことも嘘じゃない だから、オレはお前みたいに、死んでいく命に少しでも幸せだったと思ってもらえるように、動物(おまえ)たちに接するよ 死を悼みて幸せを願う → 戻 |