もう一度だけ 名前を呼んで | ナノ

大好きだから、構って







面白くない
その一言が俺の中をぐるぐると回る
だって最近遥人に知らない内に友達が出来ていたんだ
遥人はい組で、勘ちゃんと俺・・・正確には勘ちゃんだけなのだけれど、一番最初に仲良くなったのは俺たちなのに
あぁ、ほら今だって、この間友達になったって言ってたろ組の奴といる


「・・・でな、先輩がずっと駄目って言ってたのに、今日は触らせてくれたんだ!」
「そうか、よかったな」


嬉々として遥人に出来事を話すその姿に、心がもやっとする
俺はその2人を邪魔するように、近づいて遥人に抱きついた


「どうした、兵助」


抱きついた俺の頭をぽすぽすと撫でる遥人に、俺はぎゅっと腕の力を強めた
そんな俺に、遥人は若干苦笑いを浮かべる


「なにが気に入らないのか、言ってくれないと分からないよ」
「・・・別に、たいしたことじゃない」


そう言っても、表情は全然そういう表情じゃなくて
遥人は後で部屋においでと言ってくれた


「いいなぁ、兵助は構ってもらえて」
「ハチも構っているだろう?」


羨ましそうにハチがそう言うから、俺はふいっとそっぽを向いた
子どもみたいだって自覚はあるけど、まだ俺は10歳だし
むしろ大人びてる遥人が悪いって事にしておく


「オレ嫌われてる?」


ハチがそんなことを呟いたので、別に嫌ってるわけではないことをふるふると頭を振ってあらわした
そうすれば、ほっとしたようによかったーというハチの声
別にハチの事が嫌いなわけじゃないし、むしろ人としては好きだ
けど俺の中では、ハチよりも遥人のほうが好きだから、そうなるだけで


「とりあえず、ご飯に行こうか、早くしないと好きなものがなくなってしまうよ?」
「あ、それは嫌だ!ほら、兵助いくぞっ」


ハチに、遥人に捕まっていた手を取られて、ちょっと離れるのは嫌だったけれど、豆腐のために食堂に行くことにする
でも、ハチに握られた方とは反対の手は遥人の手を握って


「豆腐っ」
「本当に兵助は豆腐が好きだな、私の分にあったらいるか?」


遥人が笑ってそういったから、俺は大きく頷いた
結局のところ、俺は豆腐も遥人も甲乙つけがたいくらい好きだって事
その次は勘ちゃんで、その後当たりに・・・ろ組の三人かな




大好きだから、構って







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