気配りも大切 「へー、三郎にろ組の友達できたの?」 「あぁ、正確に言えば"作らせた"に近いんだけど」 まるい目を見開いて、少し驚いたように勘が言ったので、私は軽く頷いて返した 前々から三郎と一緒にいるろ組を見かけないと思っていたら、案の定ろ組の中で孤立していたのだ 豆腐に箸をつけながら、兵助はきょとりとして言った 「でもさ、そんなにすぐに出来るものなのか?言ったら悪いけど、三郎の態度ってあんまり良くないだろ」 「前々から同室の不破がね、三郎の事を気にしていたようだったから」 背中を押してあげたよ、と口元を緩めれば、勘も兵助もなるほど、と納得した 三郎もなんだかんだといって彼のことは気に入っていたようだし 不破は三郎が一人になりたがっているんじゃないかと気を使って、気にかけてはいたものの自ら話しかけることはしていなかったらしい 三郎はその気の使い方がなんだかくすぐったくて、余計に天邪鬼に輪をかけたようだ 「だから今日は不破と一緒に食べるんじゃないか?」 「ところがどっこい違うんだ」 私の言葉に答えるように、後ろから声が聞こえて、続いて軽い衝撃 どうやら三郎が来たらしい 私はぺしぺしと首に回された腕を軽く叩いて、離れろという意思表示を示す 三郎が素直に離して、彼に向き直れば、狐面ではなく、不破の顔 「三郎・・・不破に顔を借りたのか」 「いいよって言ってくれたんだ!」 「そうか、それは良かった」 仲良くなれたんだなと作り物になってしまった髪を、前と変わらずくしゃりとなでる 三郎は嬉しそうに笑った 「だから、雷蔵も一緒に、食べて良い?」 「あぁ、私は構わない。勘と兵助は?」 「おれはいいよ」 「遥人が良いなら・・・」 勘と兵助に確認を取れば、色よい返事が返ってきて 三郎は入り口にとって返すと、不破の手を引いて走ってきたので、私は来る前にご飯をとって来いと示せば、それもそうだと2人は列に並んだ それを見てから、私は食べかけの膳に箸を置く 「もう食べられないの?」 「え、でもいつもはもっと食べてるよな、具合悪いのか・・・?」 「あぁ、違うよ、2人が来たときに食べ終わっていたのでは良くないだろう?だから待っていようかと思って」 心配をかけてごめんと説明すれば、勘と兵助は互いの顔を見て、そして箸を置いた その行動に、私は別に良かったんだけど、ともらすも、2人は首を振る 「遥人が待つのに、俺たちが待たないのは冷たいやつみたいだし」 「それに、友達なら待たなきゃ。ね?」 口を緩めて柔らかい表情の兵助と、にこにことした勘はそう言った 私はその2人の言葉に、暖かさを感じて、ありがとうと返せば、意図せず嬉しそうな声音になっていた 気配りも大切 戻 |