お仕事と不運と 授業を終えて、委員会活動の時間になると、私は一番下級生のはずなのに、ある意味で一番頼られる存在になる その理由は、委員会らしいものだ 「遥人、これ、重要なものだから、運んで貰っても良いか」 「はい、どこに運べばいいですか」 そうだな、と手を当てて、分かりづらいかもしれないなぁと呟く篠原先輩に、うしろで伊作先輩が動くのを感じた 「僕がいきまうわぁぁぁっ」 トイレットペーパーに足を引っかけて盛大にバタンと音を立てて、伊作先輩が転んだ どうやら、補充に行った夏目先輩が落としたらしい 「伊作・・・相変わらず不運だなぁ」 「うぅ・・・」 「あー・・・とりあえず、伊作先輩と行けば分かりますか?」 涙を流し始めた伊作先輩を見て、苦笑した篠原先輩 これが一日に必ず、しかも委員会のときだけで一回はあるのだから伊作先輩の不運が相当なものであると言うのがよく分かる 幸いにして、私は蓮と藍のおかげで罠にかかることはなくて、不運じゃない保健委員として有名らしいと、先輩から聞いた だからか分からないけれど、作法委員の先輩がなんか私を罠にかけるために奮闘しているらしい 正直、私の力というわけではないのだけれど・・・ 誤解を解くのも面倒だし、目新しいから噂が一人歩きしているだけだ しばらくすれば正常に戻るのだと、平安の世での兄を見ていればわかったことだ 私は篠原先輩から書類を受け取ると、伊作先輩を連れて、医務室を後にした 「遥人くんと一緒だと罠にかからないからうれしいなー」 「そうですか?私もかかる時はかかりますけど」 「それでも僕らの中では一番不運じゃないよ、むしろ一年生なのにそれだけ避けられるって凄いことだもん」 にこにこと笑いながら私と手を繋ぐ伊作先輩 ちなみに手を繋いでいる理由は、繋がないと伊作先輩は不運をひきつけて大変なことになるので繋いでいるだけであり、断じて不埒な理由があるわけじゃないことを説明しておく ・・・むしろ、これは兵助に説明するべきなんだけど なんだか兵助は私にべったりで、勘がよく苦笑してるのを見かけるから 「あ、遥人・・・!」 噂をすれば兵助とばったり 目がきりっとした、ちょっと怒ってるみたいだ 「兵助、こちら保健委員の先輩で善法寺伊作先輩、保健委員会一の不運」 「遥人くん、その紹介の仕方はひどいんじゃないかなぁ・・・。えっと、僕は2年の善法寺伊作だよ、よろしくね」 「・・・1年い組の久々知兵助です、とりあえず手始めにその手を離してください」 完全に目が据わってる兵助に、私ははぁとため息をついた 最近これが多くて、まともにクラスメイトと話せなかったりする ・・・何故だろうか 「兵助、伊作先輩は不運すぎて不運じゃない私と手を繋いでいないとすぐに罠に引っかかるんだ。別に兵助が気にすることじゃない」 「・・・・・・遥人がそういうなら・・・・・・」 相当しぶしぶと言った感じで兵助はまた後でと去っていった 気分を害さなかったかと伊作先輩を見上げれば、苦笑を浮かべていた 「遥人くん、大切にされてるねー」 「そうですか?」 「うん、とりあえず、早く行こうか」 先を促されて、私は伊作先輩に理由を聞かぬまま、手を引かれて廊下を歩き始めた ちなみに歩き出した瞬間に、伊作先輩が罠を踏んで伊作先輩の頭に板が落ちてきたのは、不運委員だからとしかいえないなと思った お仕事と不運と → 戻 |