戦国の時の二人の話

「ううー、暑うございます…」
「ははっ、だらしねえな。
 前までの暑さ我慢はどこいった?」
「っ…ボロが出たとおっしゃったのは元親様なのに。
 どうせ私は甘ったれでございます」

風にあたろうと窓辺に座るがどうも土佐の暑さには勝てない。
そんなところを何度も見られてしまってはもう我慢する気もなくなってしまう。

我ながら武家に嫁いできたくせに駄目だなとは思うけれど横にいる元親様はというと必要最低限の衣を脱いで大の字で転んでしまってる。
こんなところを見てはつい自分だって開放的になってしまいと思うのも仕方ない。

さすがに脱がないけども…。
あと転んではいないけども…。


「んな暑いなら名前も脱いじまえばいいのに」
「そ、そのようなことは無理ですっ!」
「今二人きりじゃねえか、別に俺は気にしねえぜ?」
「っ」

元親様が気にしないとおっしゃられても。
他でもない私が気にするに決まってる。

脱げだとか…言われたことがないとは言えないし、夫婦という関係なのだから正直恥ずかしい格好だって見られた。
それでも、これはこれ、それはそれなのである。


「…なんだよ黙っちまって。
 恥ずかしがったって可愛いだけだぜ?」
「だ、誰のせいですか!」
「わかってる、俺のせいだな」

悪いとも思わず笑顔でじゃあと元親様が言うと次の瞬間体がよろめいた。

「元親様!?」
「まあ脱げとは言わねえからくつろいでもいいじゃねえか。
 どうだ、座ってるより下冷てえだろ?」
「…はい」


どうやら手を引かれて転んだらしい。
手を掴まれたままだと何も反抗できなくなってしまう。

「………それにこっちのほうが近えじゃねえか、距離が」
「へ?」
「なんでもねえよ!そう何度も言ってたまるか!」
「ずるいです!いつも私にだったら言わせるではないですか!!」

本当は元親様の小さな声。
ちゃんと聴こえてた。


「…もっと近くに来いよ」
「はい!」


だけどたまには私だって普段はなかなか見られない元親様の一面が見たくもなるし、愛おしく思う。
妻だもの、それはもう仕方のないこと。

繋がれた手に入る力に、微笑む大好きな元親様。
夏の暑さは厭わしく思うけれど、手に込められた熱さはどうしても残っていて欲しいと思ってしまった。




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もう暑くなってきたので暑い日のお話です!
お題くださった方ありがとうございました!!




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