戦国時代の時のもので、元親と会った時と言うよりは元就・鶴姫・孫一等の出会い頭がどんなのだったのか

嫁いできたことは元親様との出会いのおかげで私にとってとても幸せな結果となった。
それでも来たばかりではいろいろな大変なことがあって・・・。
それはどこでも一緒だとは私もわかっているけれど。

それでも正直人見知りなところがある私にとっては挨拶は苦手であって。

「大丈夫だ、顔合わせたって一部の奴等だけだ。
 名ぐれえ聞いたことあるだろう、毛利元就に雑賀孫市に鶴姫って」
「き、聞いたことありますけど・・・でもその方々って本当に私が会ってもいいのかどうかとですね」
「戦友―とは言いはしねえが手を借りてる身だし、こっちも手を貸す側だ。
 どうせその内お前さんも会うんだ、遅かれ早かれの違いだ。
 ・・・それに俺もいるんだからよ、大丈夫だ」
「はいっ、私元親様の名に傷がつかぬよう最善を尽くします」


胸の前で握りこぶしを作り、改めて気持ちを入れ直すと元親様の大きな手が私の頭を撫でる。
その様子にちゃんと夫婦に見えるのか・・・なんて、頭の隅で思ったりもしちゃうけどきっとこの嬉しくてにやけた顔で言っても説得力はないんだろう。


「あ、そういえば私ついさっき緊張のせいで凄い汗かいちゃったんです。
 毛利様たちがいらっしゃる前に顔をなんとかしてきます、ごめんなさい」
「気にすんな、まだ時間はあんだ。
 あんま気張ってと疲れるぜ?」
「最善を尽くします・・・」

そう言って苦笑しながら元親さんのところを去った。
それでその後顔を洗って、今日も陽が眩しいなと伸びをしながらとぼとぼ元親様がいる部屋へ廊下を歩いていったんだけど。


「きゃー、そこの方危ないです!!」
「・・・へ?」

外の方を見れば何かが飛んでくる・・・?
そう思った瞬間に地に人が落ちてきた。
急いで降りて手を差し出すとその人は笑いながら立ち上がる。

「大丈夫ですか!?」
「すいません、私いっつも油断しちゃうとこうなんです。
 ありがとうございます・・・あ、お着物が汚れてしまいました、ごめんなさい」
「いえいえっ、それよりもお怪我はありませんか。
 何しろ空から落ちてきたんですし・・・」
「大丈夫です!
 落ちた、というより本来は飛んできた身ですから!!」


結果的には落ちちゃいましたけども、そう言うとその人は笑った。
その笑顔が凄く可愛くて元親さんもこういう女の子と並んだら凄くお似合いなんだろうなーと、愛でつつ自虐してしまった。

「まったくこうやって苦労するのも海賊さんのせいです。
 本当にあの人いつか自分で禁酒令でも出してでも自分がお酒好きだからお付きの方にでも怒られればいいんですっ」

海賊さん・・・?という人はこの人に何をしたんだと思うぐらいな言われようだけど。
それでも言っている内容がなんだか可愛くて微笑ましく思ってしまう。


「あ、私海賊さんのいるところまでわざわざ行かなければならないんです。
 本当に面倒くさいです・・・」
「あ、あはは・・・」

相変わらず海賊さんと呼ばれる人は誰かわからないんだけど。
だけど、どうして汗が流れてしまうんだろう。


「あ、確かこの部屋です!」
「・・・え、え、え!?」

元親様のいる部屋で別れを告げようとしたら、同時に部屋に入ったものだから驚いた。
あと、既に中に初めて見た人が二人がいるので驚いた。


「お、名前。
 って鶴の字もやっと来たか」
「遅くなってしまい申し訳ございません」
「あ、姉さまに海賊さんに毛利さんお久しぶりです!」
『へ?』


もしかしてこの人・・・。
さっき元親様が「鶴の字」って言ったってことは・・・。

「鶴姫様ですか!?
 さ、先程は私のようなものが御手に触れてしまい申し訳ございません!」
「手、ですか?」
「あ、あの!もしかして別に手に触れたからといってお力が無くなるなんてことはございませんか!?」
「はい、そうですけど?」
「良かったです・・・ごめんなさい、私の勘違いでした・・・」

ほっと息を付くと、同時に元親様と隣にいた鶴姫様が笑った。
よく見ると中にいらっしゃる雑賀様に毛利様もどことなく笑っているように見える。
いきなり失態をおかしてしまったとがっくりと項垂れる。


「こんなに可愛い人がいるなら海賊さんに会いに来てもいいですね」
「つ、鶴姫様?」
「鶴姫で結構です、なんなら鶴姫ちゃんでも鶴姫ちゃんでも許可します」
「ははっ、良かったな名前。
 とりあえずまあ二人共中入れや」
「あ、はいっ」

ドキドキしながら元親さんの隣に並ぶとまた美形だと衝撃を受けてしまった。
兄様のところのお偉い様の明智様といい、どうしてこうも私の周りには美形ぞろいなのか・・・。


「こいつが名前だ。
 美濃から来た」
「名前と申します、よろしくお願いいたします」
「毛利元就ぞ」
「雑賀孫市だ・・・・・・・・・・・・孫市ちゃんでも許可する」
「あ、ありがとうございます」

何だか雑賀様がそんなことを言うとは意外だったんだけれども、自分が受け入れられたと思うと嬉しくなる。

「名前さん、また会いに来てもいいですか?」
「ああ、私もまた名前に会いに来るぞ」
「鶴姫ちゃん、孫市ちゃんありがとうございます。
 元親様さえいいのでしたらいつでもお待ちしております」
「まあ俺を相手すんのは忘れない程度ならな?」
「長曾我部の言うことなど聞き流しておけ」
「うるせえ!」


会う前はじっとしていても汗流すほどに緊張していたというのに今では一緒になって笑ってる。
まるで初めて元親様と話した時のよう。

瀬戸内にはこんなに温かい人ばかりで。
美濃を出るとき少しは寂しさを感じてしまったけれど本当にこの人たちに合うことができて良かった。

私は本当に幸せ者だ。
元親様とは皆さん戦で結んだ絆なのかもしれないけれど、いつまでもこうやって笑い合えたらいいな。
手に触れた袖をぎゅっと握りながらそう願った。




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決して鶴ちゃんを愛でるだけの話ではありませんよ笑?
お題くださった方ありがとうございました!!







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